第12話 自慢する盛利

大きな契約を終えた盛利は、先日までの商品不足による不安から解放されて、ホッとしていた。

 

   「つばき姫、今回は大きな仕事が出来たぞ。五島藩は、これまでにない賑わいで、皆の生活も豊かになるぞ。」

   「どのように、なるのでございますか?」

   「そうじゃなー、三井楽の地で大きな工事が始まる。土地を売った農民達は、そこで働くことが出来るのじゃ。」

   「土地を売ってしまった農民は、何人くらいいるのですか?」

   「200人はいるかのー。」

   「200人もの農民が、農地を売ったのでございますか?」

   「ああ、皆、土地を売った金で家を作ったり、墓を作ったりできると大喜びしているそうじゃ。」

   「そうでございますか。」

   「なにか、疑念でもあるのかな?」

   「はい。その者たちは、農地を持っていれば子々孫々まで生活出来るのでございましょう?それで工事が終わった後は、どのようになるのでございましょうか?五島藩で生活出来るのですか?それとも、どこかへ出て行くことになるのでございますか?」

   「そこまではわからぬが、皆も喜んでおるし、今、豊かになれるのであるから、良いではないか。普通に暮らしておっても家なぞ作れぬぞ。」

   「それで良いのでございましょうか。」


   つばき姫は、それ以上続けなかった。

   盛利は、久しぶりにゆったりした気分で自分のブログを見ていた。訪問者も10人程度に戻り、のんびりとコメントを読み、返事を書いていた。

   数日後、盛利のブログにこれまでにない名前の書き込みが見られた。


   「ん?なんじゃ、これは。ムーディー?ムダイ?・・・<五島藩は、アドメニア合衆国に乗っ取られてしまいますよ。土地の売買契約は、解約したほうが良いですよ。一日も、早く。>・・・アドメニア合衆国?乗っ取られてしまう?ワケのわからんことを書き込む人もおるものじゃのー。」


   盛利は、気にも留めずに他の書き込みに返事を書いていた。ここのところ隠元からのコメントは全くなくなっていた。昨日も、先の隠元の苦労に感謝するコメントを送っていたが、返事も寄せられていなかった。

   よほど忙しいのだろう、そう思う盛利であった。

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