第11話 土地売買契約

「西山さん、僕が作ったダミーのブログ、何に使ったのですか?」

 「何って、仕事だよ。第一、今頃何よ。読者の皆さんだって、そんなこと忘れてるよ。」

 「あの・・・、昨夜、変な夢見たもので・・・。ひょっとして、何か悪いことじゃないでしょうね。あのダミーで書き込みとかしたんですか?」

 「しましたよ!社長命令だから仕方ないでしょう。ワ・タ・シが、しました!それで良い?満足した?」

 「いえ・・・、それよりうちの会社、最近、システム開発とかの仕事ないですけど、大丈夫ですかね?」

 「大丈夫だから、仕事もしない貴方だって給料もらっているんでしょう。」


隠元の会社が本来の仕事をしなくなって、もう数ヶ月が過ぎていた。にもかかわらず、資金が潤沢にあるのは、アドメニア合衆国のボッシュから今回の事業の前金が支払われているからであった。


盛利の受託の回答を得て、隠元はふたたび五島藩を訪れた。

ただ、今回は一人ではなかった。幕府直轄である長崎奉行の役人10名を伴っての訪問である。

役人達は、早速、三井楽にはいり土地の検分と農民との土地の買収交渉を行った。

隠元は、盛利ら五島藩の重役と土地の買収と仲介料について協議をつめていた。仲介料には、今後、三井楽での事業に全面的に協力する、いわゆるお世話料としての意味もこめられていた。

隠元から提示された金額に、盛利等は腰を抜かす驚きようであった。


「6万両・・・ですか?」

「そうです。幕府としては、今後10年間は、五島藩にこの事業に関して幕府との取次ぎをお願いしたいとのことで、6万両でお願いできないかとの意向でございますが・・・、少ないでしょうか?」

「あああ、いや、いや、とんでもござらぬ。話しの取次ぎだけで、そのような金子をいただいてよろしいものやら。」

「では、この金額でよろしければ、長崎奉行の役人が帰り次第、約定書を作っていただくということで、よろしいでしょうか。」

「む~~、よ、よかろうのう、皆、どうじゃ。」


1両は、現在の通貨に換算すると約10万円。つまり、6万両は60億円に相当する金額である。当時、五島藩の石高は約1万5千石であった。1石も約10万円であるので、15億円の年収があったのであるが、その4年分に相当する金額を示されたのである。

誰一人、反対するものはいなかった。

役人達は農民との土地の売買契約を結び、五島藩との約定書を締結し、1週間ほどで長崎に帰っていった。

隠元は、一人残り玉之浦の白鳥神社に参拝し、西の高野山といわれる大宝寺を訪れ、江戸に帰ったのは10月に入ってからであった。

隠元は、帰りの船の上から福江島を振り返りながら、つぶやいた。


・・・もう、これで五島藩に来ることもないな・・・

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