第6話 殿のブログ的生活

翌日、出勤してきた無題は、隠元にポツリと言った。


 「五島藩の殿は、最近ブログを始めたとか、聞きましたけど。」

 「ほう、ブログをね。で、ブログタイトルは調べてきたか?」

 「はい。『殿のブログ的生活』です。藩の運営についての考えや悩みを書いているようです。」

 「そうか、それは良い情報をつかんできたな。」


そう言うと隠元は、自分のパソコンに向かった。


五島藩主・盛利の朝一番の仕事、それは自分のブログの訪問者の確認と数少ないコメントへの返事を書くことだった。

   昼間とて、城での執務は決裁が主で他ですることもなく、決裁が済むとさっさと自室にこもりブログの記事を書いているのであった。

そんな盛利のブログに、最近、必ずコメントを寄せる者がいた。


「盛次、この隠元とかいう者、最近、良く声をかけてくれるのじゃ。どこのお方かのー。」

「父上、どこの誰かわからないところが、お互い、良いということもございますゆえ。」

「そうか、そうか。それにしても良くわしの意見に賛同してくれるのじゃ。なんとなく気分のよいお方じゃ。」

「そうでございますか。きっと、父上と同じようなお考えのお方なのでございましょう。」


  その数日後、再び、盛次は盛利の部屋に呼ばれていた。


  「どうじゃ、ブログを使って藩の活性化が出来ないものかのー。」

  「藩の活性化でございますか?良く理解できませぬが。」

  「いや、このブログを使って五島藩の魚とか、カンコロ餅なぞを売れないものかの~。」

  「物を売るのでございますか。それならば、ブログよりホームページの方が良いかと思いますが。」

  「ホームページか・・・。で、そのホームページを作るのは、お金が掛かるものなのかな。」

  「いいえ、ブログと同じでこのヤッホーのサイトを使えば無料で作れますよ。ただ、システムとかデザインが大事ですから、そこは専門家にお願いしたほうがよいかと思います。」

  「そうか。ヤッホーというサイトは便利なものじゃのー。そうじゃ、余の考えをブログに書いてみよう。だれぞ良き考えを教えてくれるやもしれぬからのー。」


  盛利は、その日のブログにさっそく藩の活性化とホームページの開設について、アイデアを求める記事を書いた。

  その記事を読んだ江戸の隠元は、小躍りしていた。


  「西山君、無題君にも伝えてくれないか。このブログをお祭りしてくれないか。」

  「お祭り?なんです、それ。」

  「ダミーを使ってでも訪問者を集中させてくれ。それと、殿の意見を褒め上げてくれ。」

  「それだけで、いいんですか?」

  「ああ。」

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