第18話 第二王子襲来
俺たちは今、城壁の外で五十機ほどの人騎と対峙している。偵察衛星が手に入れた情報では、あれらの機体はどうやらこの国の王都からやってきたようだ。今は両軍の中央でリュウドと王都から来た者が話をしている。
どうやら物別れしたようで、リュウドがイーファ改に乗り込みこちらへ戻って来る。相手も専用機なのだろうか見たことのない機体へ乗り込み自陣へ戻り始める。相手の機体を俺は見たことがなかったがアーシアからの通信によると、元の世界の大陸で作られたものらしい事がわかった。残念ながら性能まではわからなかったが、見た目からして防御に特化されているように見える。
話し合いの中身はディーヴァの集音マイクで聞いていたのだけど、簡単に言うと折れたちの第四研究施設の明け渡しの要求だった。どういった経緯で施設が稼働していることを知ったのか、その情報を手に入れた王族がやってきたようだ。
その要求をリュウドは初代のリュウガが当時の国王と交わした盟約に則り拒否をしたということだ。まあ、そもそもリュウドに施設をどうにかする権限が無いわけで、明け渡そうにも出来ないのだけどね。俺たちのことは一切明かさずに、拒否したというわけだ。
相手からは拒否したら戦いになるぞやら、そんな昔の契約は無効だやら、最後はお前らを殲滅して奪えば良いだけだと言って、交渉ともいえない話し合いは終わったわけだ。
「ケイナ、ケイカ、すまないな忙しい時にこんな事になってしまって」
「リュウドのせいではありませんのでお気になさらずに」
「それで、戦うって言っても機体は残して再利用したほうが良いよね?」
「それなんだがな、明日には出発だろ? そしたら遺跡は使えなくなるわけだし、まあ破壊して予備のパーツとして回収するしか無いだろうな」
「そういう事でしたら、急ぐ旅でも無いですし全て回収して使えるようにしてからの旅立ちでも構いませんよ」
「あー、すまないが頼めるだろうか? 別に俺としてはどうでもいいんだがな、一応王国に仕えているわけで返還を求められた時に全部壊しましたじゃ駄目だろうからな」
「ちなみに乗っている人は生かしておいたほうが良い?」
「できればそうしてくれ、特にあのテレスティアって機体に乗っている第二王子は生かしておいて欲しい。色々と交渉にも使えるし賠償金なんかも取れそうだからな」
「わかった極力壊さないように努力はするよ、中も外もね」
「頼む」
丁度会話を終えた所で、ラッパのような音が聞こえてきた。その音と共に敵と味方の人機がそれぞれ武器を構えた。きっとラッパの音は開戦の合図か何かだったのだろう。
「さてと姉さんどうする?」
「流石にディーヴァの武装を使っちゃうと中が無事に済まないわよね」
「だろうね、特にテレスティアだっけか、あれはどうしたもんだろうね」
「装甲がやたら厚いのでしょうね」
どうしたものかと考えているとアーシアから通信が入った。
『ケイカ様、テレスティアは修理も容易ですのである程度でしたら破壊していただいても構いません』
「アーシアありがとう。そういう事ならさっさと大将をぶっ壊して終わりにしようか、というかあの機体ってメインモニターは頭部だけなの?」
『どうやらそのようです。そもそも全周天モニターを使う機体はディーヴァ及びイーファ、国外の数機のみだとデータには残っておりません』
「まあ、空飛んだり、水中に潜ったり、宇宙に行ったりしないしない限り下部モニターって必要ないよな」
「ケイカ、そろそろ始まるようよ、私たちはどうしたら良いか確認しましょうか」
「了解」
少し離れた味方の人機に指示を出していたリュウドのイーファへ近寄り、テレスティアを任せて欲しい事と、大将を倒せば戦闘は終わるかの確認を取った。答えは、大将が死亡するか降参をしたら勝利になるとのことだった。あんまり言いたくはないけど、この世界の戦争って古いというか前時代的だよね。
再度ラッパの音が聞こえたと同時に両軍の機体が駆け出す。こちら側の人騎の動きのほうが滑らかで速度が出ているように見えるのは、修理とオーバーホールによるものだろう。
一五対五十、普通に考えれば数が少ないほうが不利だろうけど、オーバーホールの時についでとばかりに追加された補助システムにより、三騎を一体として運用されるようになった。相手が単騎で戦うのに対して、こちらは常に三騎で戦うことで確実に敵の数を減らすことが出来るというわけだ。
仮にこちらが一体やられても、常に交代要員としてセリカとイリナが控えている。戦場全体の指揮をリュウドが行うのだが、それも新たに全騎に付けられた通信システムによりスムーズに指示を出せるようになっている。
「姉さん行こうか、狙うはあの大将騎テレスティア」
「今回はケイカに任せるわ」
「了解」
敵軍の先頭を駆けてくるテレスティアに向かって俺はディーヴァを進ませる。
『なんだその変わった人騎は、まあいいお前らこいつは俺がやるお前らは先に行って遺跡を制圧しろ』
『応!』
五十騎の人騎がテレスティアとディーヴァを避けるように駆けていく。
『俺はオーディル王国第二王子のオーファングだ』
これは一応返答する流れだろうなと思い、外部スピーカーを起動する。
『俺は極東第四研究所所属のケイカだ』
『あん、きょくと、なんだ? まあいい降伏するなら命まではとらねえから、その人騎を渡しな』
『断る』
『ははっ、そうこなくちゃな、そのキレイな機体を傷物にするにはもったいないがしかたねーよな』
そう言うとテレスティアは背中に背負っていたハルバードを手にとり構えた。
「姉さんどうしようか、こっちも武装したら完全にオーバーキルっちゃうよな」
「そうね、もう徒手でいいんじゃない?」
「まっそれでいいか」
俺はディーヴァにそれっぽい構えをさせて、手のひらを上にして相手を誘うように手招きをしてみせた。
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