第14話 取引をする
「次はこちらの事情をお話しようと思います、信じられないことかと思いますがまずはお聞きください」
いい具合にぬるくなっているカフェオレを一口飲んだ後に、まずは俺が話し始める。
「まずは私ケイカとケイナ姉さんは、あなた方の先祖で初代のリュウガとは旧知の仲となります」
何かを言おうとするイリナに向って片手を上げることで制して話を続ける。まずは元の世界からこの世界に来るきっかけとなった襲撃、この世界へ辿り着いた後のこの施設まで来ることになった経緯、それから施設内で知った真実を語った。まあ言っても理解できないだろう所は省いた。俺と姉さんの身体のことや、生体チップ関連は言ってもわからないだろうから。
「というのがこちらの事情ですね」
「ふむ、そういう事もあるのか、流石に五百年前というのは信じがたいが、この遺跡を掌握していることから信じるしかないようだな」
「そうですね、そちらのケイカ様も白猫のケイナ様も嘘を言っているようには思えないですからね」
話し終わりカフェオレを飲もうとしたがいつの間にか飲みきっていたようで、アーシアに冷たいカフェオレをお願いした。リュウドもついでとばかりに同じものを三つお願いする辺り、順応性が高いというか警戒心がないというか判断に困る。
「それで、ケイカ様とケイナ様は今後どうされるつもりですか?」
「それなんだけど、旅に出ようと思っています」
「旅ですか?」
「ええ、ここと同じような施設が四つあるようですので、その施設を巡ってみようかと思いまして」
「ああ、確かに遺跡は他にもありますね、それらを巡るということですね」
「そういうことです、そこでご相談なのですが、この世界の今の事情などわかる限りお教えいただけないでしょうか? それ相応の対価はお支払いできると思います」
「対価ですか」
「流石にこの施設を明け渡せということは出来ませんが、あなた方が使っている機体の整備やメンテナンスなどはどうでしょうか」
「それはっ──」
「それは動かなくなった人騎も動かせるようになるということですか!」
リュウドの言葉を遮り、ずっと黙ったままだったイリナが勢い込んで尋ねて来た。
「人騎というものが、私たちの世界の侵略に用いられていたあの機体のことならそうですね。イーファも他の機体もここの施設で作られ調整されたものでしょうから可能だともいます、そうだよねアーシア」
「一度見てみないとなんとも言えませんが可能だと思われます」
「どうだセリカ」
「そうですね、こちらの世界の今現在の事情をお話するだけで、動かなくなった人騎の修理などをしていただけるということでしたら、報酬としては破格だと思います」
「それじゃあ契約成立ということで、いいよね姉さん」
「ええ、それで構わないわよ。それでアーシア、同時に修理やメンテが可能なのは何機までいけそう」
「同時に修理をということでしたら最大で三機までは可能となっております。修理の度合いによっては一日で終わらないこともありますので、その辺りはご了承いただきたいです」
「そういう事だから一日三機までということで、ちなみに何機くらいあるのかなその人騎は」
「現在この領で稼働しているのは十機だな、後は動かなくなっているのが五機だ」
「アーシアこの三人にとりあえず一週間限定のゲストカードを渡してあげて、移動可能範囲はこちらの共用スペースと、格納庫に設定してあげて」
「かしこまりました」
アーシアがあらかじめ用意していたのかカードを三枚取り出しリュウドたちの前に一枚ずつ置いた。
「そちらのカードを持っていればここ共有スペースと、昨日ディーヴァが入った格納庫へ入れるわ。カードは無くさないようにね、修理やメンテナンスが必要な機体を運び込んで貰えれば後はこちらで対処します」
「わかった、 準備ができ次第持ち込むとする、それでは本日は帰らせてもらう。この世界に関しての情報は、セリカ頼む」
「わかりました、それではケイカ様ケイナ様アーシア様、明日から暫くの間よろしくお願いします」
「ええ、こちらこそよろしくおねがいしますセリカさん」
俺はセリカさんと握手をした。
「それでは失礼する、あとカフェオレご馳走様でした、初代様が好物なのもわかる気がします」
「アーシアお見送りをお願いね」
「かしこまりました、それでは出口へとご案内足します」
アーシアに先導されながら、リュウドとセリカとイリナは共有スペースから出ていった。
「姉さんこれで良かったのかな?」
「良かったと思うわよ、それにメンテナンスや修理をすることで、この世界の機体の性能なんかもわかるからね」
「あー、だからメンテや修理をすることにしたのか」
「記録映像を見た感じだと、あの性能ならディーヴァ単体で殲滅も可能といった所かしらね。ただ私たちの知らない技術がどこかにある可能性を考えて、世界の情報と機体の情報を得られるという意味では一石二鳥といったところね」
さすが姉さんそこまで考えていたとは思っても見なかった、俺もまだまだだと再認識することになった。
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