第13話 リュウガの子孫
「ケイナ様、ケイカ様おはようございます、お客様がお見えになっておりますがどう致しましょうか?」
姉さんと朝食を食べ終えて、食後のカフェオレを飲んでいる所にアーシアがやってきてそう切り出してきた。ちなみに姉さんも量は少ないがちゃんと食事はできるようになっているし、味覚も人間のそれへと変わったのだろうか。ただ食事をしなくても全く問題ないようだ。
ただどうして猫のからだのままなのかと聞いたところ「あとで分かるわよ」と言われてそれきりだった。もしかすると後でヒト型機械体へと生体チップを移植するのかも知れないな。
「来客ってどういう事かな、もしかして私たち以外にも今の時代に生きている人がいるとか、他の施設の方が来たとかそういうこと?」
「あーそうか、有機体を生成して生態チップを移植し続けるとか、姉さんみたいに機械体なら可能かも知れないね」
「いえ、尋ねてこられている方はこの施設周辺を治めている領主を名乗っております。ただ期限切れのゲストカードをお持ちですので、念の為に報告させていただきました」
「今までは尋ねてこなかったの?」
「過去数十回、数十年おきに来られていましたが、私では期限切れのゲストカードに対して判断も入所許可も出せませんので、ご返答を控えさせていただいておりました」
もしかするとリュウガの子孫がこの施設を尋ねてきたけど、リュウガが悪用させないために子孫に正規IDとカードを残さなかったってことかも知れない。
「きっとリュウガが、何も知らない子孫に施設を荒らされないために、正規IDを残さなかったのでしょうね」
姉さんも俺と同じ結論に至ったようだ。
「どうする姉さん?」
「そうね、リュウガの子孫なら会ってみるのも良いかも知れないわね。今現在のこの世界の事も知りたいし。アーシア、まだ待っているようなら本人と護衛を二人まで受け入れます。範囲はここ共有スペースのみとしましょうか」
「かしこまりました、それではお迎えに向かいますので失礼致します」
アーシアが食堂を出ていくのに合わせて、俺はカフェオレを飲み干してから返却棚へとカップを置いてから、姉さんを抱き上げて移動する。共有スペースの中央にはソファーが置かれているのでそこで待つことにした。
しばらく待っていると、どこかリュウガの面影がある男性とその男性の後ろを女性が二人アーシアに案内されてやってきた。三人の服装はどこか俺たちの施設で使われていた軍服に似ている。俺は立ち上がり、キョロキョロと辺りを珍しげに見ている三人を出迎える。
「ようこそ、第四研究施設へ」
「あ、お、う」
顔を赤くしてどこか戸惑っているリュウガに似た男性が立ち止まるが、後ろからついてきていた女性に脇腹を肘打ちされて悶絶している。
「兄がすみません、わたくしはここリュウエン領を治めています、こちらのリュウドの妹でセリカと申します」
「この愚兄とセリカ姉さまの妹でイリナです」
「おれ、私はケイカです、よろしくおねがいしますね」
俺といいかけたのをなんとか修正して名乗る。
「私はケイナよ、よろしくお願いしますね」
白猫の姿の姉さんが言葉を話したことに二人は驚いた表情を浮かべている。
「すまない、俺はここリュウエン領を預かっているリュウドだ、今回は特別に入所の許可をいただき感謝いたします」
肘鉄から復活したようでリュウドと名乗ったリュウガに似た男性が、お腹に片手を添えて頭を下げてくる。俺もそれに合わせて頭を下げる。
「えっと、とりあえずお座りください」
「失礼する」
「失礼致します」
リュウドとセリカはソファーに座ったが、イリナは二人の後ろに立っている。表情からはわからないけどこちらを警戒しているようだ。
「イリナさんもお座りください」
俺の代わりに姉さんが座るように促すと、少しためらった後に大人しくリュウドの横へと座った。
「アーシア、皆様にお飲み物を、何かご希望はありますか?」
「酒は駄目だな、あーあれだ、何だったか初代様が好んで飲んでいたカフェオレというやつを貰えるかな、お前らもそれでいいよな?」
リュウドが決めてセリカとイリナが頷いた。
「それじゃあ私もカフェオレをお願い」
「かしこまりました、少々お待ちくださいませ」
アーシアが一礼をして食堂へと移動していった。
「(あぁなんて可憐なんだ)」
リュウドが俺の方を見ながらそう呟くような声が聞こえた。それと同時に鳥肌がたった。何を言っているんだこの男は。横に座っていたセリカとイリナにもリュウドの声が聞こえたのか、両方から脇に肘打ちをされて悶絶している。
「ぐおぉ、いや俺はだなただセリカさんが美しいとおもってだな」
「気持ち悪いからそういう目で見ないでください」
つい本音がストレートに出てしまった。いやだってさ男にそんなこと言われても、気持ち悪いとしか思えない。
「おうふ、その蔑むような目もまた良い」
再び二人から肘打ちと、足も踏まれたようでリュウドは悶えている。
「「こんな変な兄ですみません」」
「あ、いえ、お気になさらずに」
しばらくするとリュウドも復活したようだ。そのタイミングでアーシアがホットカフェオレをバッシングカートに乗せて戻ってきて、それぞれの前に置いた後に俺たちの後ろに控えるように立って。
「これがカフェオレというものか」
「まだ熱いので気をつけてくださいね」
一度カップを手に取ったリュウドは、確かに熱そうだと思ったのかソーサーにカップを戻した。リュウドの隣りに座っているセリカがこほんと咳払いをしている。
「まずは俺たちを招いていただき感謝を、それと昨日は知らぬ事とは言え失礼した」
「失礼?」
「ああ、君たちがこの遺跡へ入ることを止めようとしたことだ」
なんだか色々と認識の齟齬がありそうな感じだな。俺としてはいきなりディーヴァが街に侵入してきたら止めるのはあたり前だと思っていたので、問題ないとこたえた。その後はリュウドたちの事情などをまずは聞くことにした。
「俺のご先祖である、初代のリュウガはこの遺跡を悪用されないようにと封印をしたと伝わっている。ただし例外は遺跡に止められること無く入ることができる者に関しては阻む必要もなく、協力をするようにと伝わっている。特にケイカ、もしくはケイナと名乗るものが来た場合は特に丁重にと」
「そっか、リュウガがねー」
姉さんが感慨深げに頷いている。リュウガが俺たちの事を気にしていてくれたことはすごく嬉しく思った。ただリュウガと呼び捨てにしたことで、三人が訝しげに白猫である姉さんを見ている。さてと、次はこちらの事情を話す番だな。
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