第52話 帰還
「父上……! 母上……! アビノンは……! 無事に帰って参りました……!」
緑と金の混ざった髪。
中性的で人形みたいな顔と体型。
噂のアビノンだった。
「「「「「…………」」」」」
「あれ? マルコ?」
ゴシゴシと目をこするアビノン。
「それにえーーっと………フェロモン?違うな、フェミニン?違うな、フェロン? そんなんだったっけ? フェノン?そうそう。フェノンだフェノン。それと、メナとリル? ミナ?はなんか太ってない?」
指をさすアビノン。
「どうして、ここに? あ! わかった!」
トントンと入ってくるアビノン。
「人の国なんて滅んでも知らないとか言いながら、実際は気になってたんでしょ? それでボクが心配になって来てくれたんだ! もう、素直じゃないんだからマルコは! 大丈夫だよ! ボクは元気だからネ!」
キョルンと横ピースを決めるアビノン。
「「「「「………」」」」」
崩れ落ちていたビシウィがすっと立ち上がると、ゆっくり近づく。
「パパ! ただいまぁ! 大丈夫? 顔色悪いよ? そう言えば、サルは? なんか見ない気がするけ、ドゥブゥッ!?」
お腹を押さえてうずくまるアビノン。
ビシウィがその鍛え上げた拳を叩き込んだからだ。
「何するんだよ!」
ぴょんと立ち上がるアビノン。タフだ。
「こっちのセリフだ! 何してくれたんだ!お前は!」
拳骨が振り下ろされた。
◆◆◆◆◆◆
「ごめんなさい。調子に乗りました」
父は強かった。
ボロボロになって正座するアビノンから、殊勝な言葉が出てくる。
〖
〖結構使うわね〗
〖英才教育する箇所を間違え……いや、本人の資質の問題か〗
「その格好はどうしたの?」
マルコが聞く。
アビノンが自分の服を見回す。
場末のホストみたいな派手っぽいスーツ姿だ。
「えへへー! カッコイイでしょ?」
「全然」
首を振るマルコ。
「それ、【マテソンCo.】のパクりだと思うんだけど、全体のバランスが悪いよね。襟に入ってる赤も下品だし………」
マルコの指摘は続く。
「………まぁ、まだまだあるけど、とりあえず引くほどダサいのはこの辺かな」
「………」
ヘコむアビノン。
「私も消えて欲しいほどダサいと思うが、それよりお前、その金はどうしたんだ?」
ビシウィが突っ込む。
「そう!聞いてよ! オニワタリゴケって凄いね!」
「「「「は?」」」」
首をひねる4人。
「オニワタリゴケ売ったらさ、すっごい高かったんだよ!」
「「「「………」」」」
「お、お前コケを売ったのか!? お前の任務はコケを取ってくることだぞ!?」
「えー? だってさ、昏睡薬は使えないってマルコたちが言ってたしさ、実際、使わなかったじゃん?」
「そういう問題でなないのだ!」
コラーっと怒るパパ。
「マジックバックは?」
メルがポツリと尋ねる。
「「へっ?」」
メルを見る親子。
「アンタもしかして、マジックバックごと売ったんじゃないのってこと」
リナが補足する。
「そうだよ。汚れた袋ごと引き取って上げるよってこっちで処分しとくからって、優しいよね」
胸を張るアビノン。
「いくらだ?」
フェノンが聞く。
「え?」
「いくらで売ったと聞いている」
「えーっと…」
チャリチャリと小銭を出すアビノン。
『服が…で、あれが…だったから…あれは美味しかったなぁ…あ、あれも買ったな。アレじゃなくてアッチにしとけば……あ、あれもあった』と計算するアビノン。
かなりムダ遣いの気配がする。
「これだけかな?」
計算が終わるアビノン。
「マルコ、あのマジックバックの性能は?」
「えーっと、確か……」
説明するマルコ。
「10分の1」
メルがばっさり言い切る。
「え?」
「相場の10分の1ってことよ、その値段」
リナが呆れた声で補足する。
「えっ!? 何それ! 酷いじゃないか!」
商人が。
「ヒドイ話ね」
アビノンが。
「なんで教えといてくれなかったんだよ、ヒドイじゃないか!?」
3人が?
――バターン――
「「「「「!?」」」」」
突然響いた大きな音のする方を見ると、ビシウィが泡を吹いて倒れていた。
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