第45話 5分
「暇ね」
「待つだけの5分は長い」
『どうしたぁ!? 貴様の力はこんなものかぁ!! さっさと呪いの力を集めろ! 回復が遅いぞぉ!』
「楽しそうね」
「絶好調」
「最近、アルティメットモード使う機会無かったから」
「あんな暴力の権化使う機会なんてCランクには無い」
『あ、泣くな!泣く暇があるなら戦え! 情けない姿を晒せば帝の名が泣くぞ! その太い腕は飾りかぁ! さあ行っくぞー!気合いで受け止めろ!どリァああ!!』
「単騎戦闘力なら、Bランク上位だものね」
「正面からの殴り合いなら上位というか……」
「あのスピードに魔法って当たるの?」
「点ではムリ。面で制圧すれば当たる」
「さっき魔法の中突っ切ってたよね?」
「突っ切ってるように見えて…見えないけど、交わしてる。圧力面が狭いと躱される。ガチの壁じゃないと」
「呆れた機動力ね」
「魔法防御は低いから魔法で潰せばワンチャン。でも発動までに詰められてボコボコにされる可能性が高い」
「ボコボコっていうか…」
『コラァー! また斬れたぞ! やる気があるのか! ほら、早く繋げえ! 斬るところが無くなるだろうが!』
「あの手甲についてる刃物の斬れ味がえぐい」
「マテリアルシールドは?」
「ハード重ねればなんとか。でも、私じゃ展開に追い付けないから、いずれ首が飛ぶ」
「舐めプしてる間に逃げるが勝ちよね」
「ただ逃げるためには囮がいる」
「逃げようとすると追いかけて来るもんね」
「お、そろそろ5分」
「5秒しかない」
「「フェノーン! フェノーーン!!」」
「ハァッハッハッハー! どうした!貴様の本気はそんなものか!」
「「フェノーン! フェノーーン!!」」
「ハッハッ…ん? なんだ? もうか? チッ…よし、任せろぉ!!」
――スドーーーン――
という音と共に、涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった猿が吹っ飛び壁に激突する。
「アブソリュートレールガン・カタパルティ!チャァアージ!」
アブソリュートレールガンはチャージ式。チャージ時間は2秒。アイドルタイムは1分。
ギュオーーンとコンベアから危険な光が溢れる。
「ロックオーン!」
ビカビカァと更に危険な光り方をする。
――ビーブ! ビーブ! ビーブ!――
明らかな警告音が鳴り響く。
「5分」
5倍ぐらいに膨らんだネム。
達観し穏やかな表情のマルコ。
「ファイヤー!!」
――ズドガン――
「いってらっしゃい」
ネムが手を振る前に黒刀を構えたマルコが、炎天猿帝に突き刺さった。
メルのパーフェクトシールドは、自分で全く動けなくなる代わりに、物理ダメージと、魔法ダメージを完璧に防ぐ。
ソニックブームも衝突の衝撃もへっちゃらだ。
爆音と共に砕け散ったアブソリュートレールガンがキラキラと輝く。再使用まで2時間。この間はピストルしか使えない。
逆に言えば、これだけ無茶苦茶やった後でもピストルは使える。
そして、意外とクソ度胸が座ってるのがマルコだ。
極めて常識に精通した
「スレプフリープス」
冷静に魔法を唱える。
ピシリと伸びた背筋。
一分の怯えもなく引き締まった表情。
澄み切った朝に吹く爽やかな風のような声。
巨大なモンスターに剣を突き立て、魔法を唱えるその姿は、ただただ凛々しい。
ポゥ…ポゥ…ポゥ…ポゥ……
淡々と光る。
ポゥ…ポゥ…ポゥ…ポゥ…
「スタンバイ状態をレールガンでぶっ飛ばしてもキャンセルにならないんだな」
アルティメットモードを解除した
「本人に似て意外とタフ」
「メルのシールド制御も相当レベル上がったよね」
「任せる」
マルコが潰れないようにシールドを張りつつ、猿もマルコに潰されないようにシールドを張り、かつ、黒刀が刺さるように隙間も作る。
音速の5倍の世界で行われた神業である。
ちなみに、普段のプランCの場合は、モンスターにソニックブームに耐えるだけのマテリアルシールドを張って、弾も的もまとめて潰れたトマトにしてしまう。
疑いの余地なく鬼畜の所業である。
「リナの照準もかなり精度が上がったな」
「任せて」
マルコの構えた剣は、猿の左脇腹に刺さっている。貴重な素材が無い唯一の場所だ。
音速を超える弾速の反動を押さえ込んでの神憑り的な照準精度だ。
「あ! 晴れた」
「効いたか」
「狙い通りだな」
「「「マルコ!」」」
3人が晴れやかな顔でマルコに駆け寄る。
しかし、マルコがそれに答えられたのは、スレプフリープスが終わった1分後だった。
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