第40話 フォーメーション

「全滅してるわね」

「すごい」

「大猿の呪臓はそこそこになるが、無視されてるな」

サクサクと大猿から呪臓を引っこ抜きつつ、3人がホクホクする。

「Aランクって儲かるんだねー」

マルコは呪臓をキレイに取り出せないので、見てるだけだ。

クアトロは玄関で待機のままだ。

指揮系統が違うから。


「あの絵はどうなんだろ?」

「あの絨毯はいいものだぞ?」

「あのシャンデリアは水晶とダイヤ」

「足がつきそうだな」

「惜しいわね」

「この壁って何でできてるんだろうね?」

緊張感を高めつつズケズケと登る4人。


「待て、何かいるぞ」

かなり高い所まで登った先の広間で、3人を止めるフェノン。

「アレは…【白日猴爵はくじつこうしゃく】!?」

成人男性と変わらない背丈。

成人男性の2倍ぐらいある横幅。

真っ白な体毛。

口から生えた長い牙。

危険度:中だが、その中でも上位で、高に近い大敵、不眠大猴が進化した姿だった。

それが3匹。

何も持ってないのと、大きな盾を持ってるのと、細身の2振りの剣を持ってるのと。


「なかなかの大物が現れたな」

「見覚えのある装備ね」

「やられた?」

冷静な3人。

「どうしようどうしよう」

オロオロするマルコ。


「マルコは下がっていろ」

「危険」

「目の端に映る所にはいてね」

パッと体制を整え、フェノンを先頭に、リナとメルで三角形を作る。


「ホェワアー!」

1頭が吠えると、2頭が前に出て逆三角形を作る。

「フォーメーション?」

「猿が?」

「嫌な予感がするな」


フェノンの言葉が分かったのか、後ろの一頭がニヤリと笑う。

そして、左手をシュバッと横に突き出す。

「「「まさっ!?」」」

言い終わらぬうちに青い弓が現れ、その手に収まる。


「アルコ!?」

「なんで!?」

「来るぞ!!」

引き絞られたアルコから青い豪熱が走る。


「ボエウオー」

飛び退いたリナを狙って前の一頭が体当たりをかましてくる。

その手には、巨大な棘付きの盾スパイクシールドが構えられている。

「死ぬ!」

着地の勢いのままに、ゴロゴロ転がって体当たりを避けるリナ。

「フォヤアー」

しかし、新しい吠え声と共に、転がり終わり際を3頭目が踊りかかる。両手には二振りの剣。

「死ねる!」

「ハッ!」

剣がリナを捉える直前に、フェノンの蹴りが猿を蹴り飛ばす。


「たすか」

「ホェワアー」

「メル!」

「マジックシールド!」

再び飛来する青い矢が当たる直前、2人の前の空間が歪み、矢がくちゃりと潰れる。


「ボエウオー」

「フォヤアー」

スパイクシールドの突進と双剣の乱舞が間髪入れずに2人を挟む。

「なっめんな!」

リナがピストルを構える。

「うらぁあ!!」

気合いと共にパスンパスンパスンパスンと気の抜けた音が出る。

シールドラッシュを仕掛ける猿の足元がドドドドンと破裂し、ラッシュが止まる。


「シッ!」

後方から襲い来る凶刃をフェノンが迎え撃つ。

黒刀で剣戟を受け止め、再び蹴り飛ばす。


「猿のくせに連携が巧いわね」

「各個撃破の方が良さそうだな」

「了解、私は弓」

メルが即応する。

「あの盾、絶対壊す!」

パスンパスンとシールドに撃ち込みながらポジションを整えるメル。

「すると、双剣か」

コキコキと首を鳴らしながら、蹴り飛ばした猿の方へ歩くフェノン。


「いやー、すごいことになってるね」

「メー」

「でも、なんでアルコをあの猿が使ってるんだろうね?」

「メー?」

「あの盾も双剣もドスさんとトゥレスさんのだよね?」

「メメェ」

「3人がやられたのかな?」

「メーメメ?」

「うーん……。3人とも大丈夫かな?」

「メーメー」

「自信はありそうだけど」

「メーメー」

登ってきた階段の近くの物陰に隠れて、覗き見しながら、戦況を固唾を飲んで見守る1人と1匹。

「この宝石って高いのかな?」

「メエ?」

「高そうだよね。あ、メルお茶飲む?」

「メエ」

「熱いから気をつけてね」

「メ゛!?」

「ほら、気をつけてって」

予断を許さないまま、戦況は動く。


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