第38話 欲張りセット
「魔法が効かない?」
「それは?」
「つまり?」
「「「マルコみたいに?」」」
コテンと首を傾げる3人。
「いや、効いてただろ!?」
「そうだ」
重く頷くクアトロ。
「いや、効いてただろ!?」
「しかし、睡眠以外にも魔法があるだろう?」
「「マルコと違って」」
そうそうと頷く2人。
「いちいち俺を挙げるなよ!」
「あるさ! 彼と違って」
バカにするな!と立ち上がるクアトロ。
「俺と比較するなよ! エリートだろ!?」
「……全て無理だった」
「全て無視だよ!」
しかし、すぐに力なく座り込むクアトロ。
「睡眠だけじゃない。麻痺も、攻撃力低下も防御力低下も、瞬発力低下も、視力奪取も、聴覚奪取も認識阻害も、魔力効率悪化も、全部ダメだった……」
「マジかよ……」
余りの実力差に青くなるマルコ。
マルコの肩に立っているネムが、ポンポンとマルコを慰めている。
「流石だな」
「デバフの欲張りセットね」
「圧巻」
マルコをポンポンと慰めるその顔は、眩い笑顔だ。
「あ、エルフの魔力!」
マルコがピコンと手を叩く。
「「「ああ!」」」
『逃げたな』と思ったけど、3人もピコンと手を叩く。
「魔法が効かなくなったとか言ってたわね」
「あの
「ハイエルフの魔力を取り込んだ猿に騎士団が壊滅されたと言っていたな」
「そうなのか!? 私の魔法は全てデバフ系だからか……くそ……」
「しかし、魔法が効かなくとも、できることはあるだろう?」
「「「マルコじゃあるまいし」」」
「……」
もう拗ねることにしたマルコ。
「いや、メクジラは元々3人パーティだったんだ。そこにデバフ持ちの私を入れたんだ。デバフが使えないと、私の実力では足でまといだ。当然、彼よりは色々できるがな」
『最後の一言は要らない思わない?』とネムに同情を求めるマルコ。
「と、いうことは、だ」
全員の目がマルコに向く。
マルコはネムの毛繕いして、現実逃避している。ネムも気持ち良さそうに目を細めている。
愛くるしい羊と戯れる牧歌的なその姿は、壊滅的な破壊力を持った光景だった。
「マルコの出番ってほんとに無い?」
リナがマジマジと見る。
「厳しい?」
パシャパシャとスマホを向けながらメルが続く。
「今更だ」
「「!?」」
吐き捨てるようなクアトロ。
険の鋭さに驚くリナとメル。
「いや、スレプフリープは変わらず通るだろうな」
しかし、フェノンは違った。
「試してみれば分かるだろう」
「そ、それなら詰所にいるエルフに試すといい。私のエアリィナディアダスでは眠らせられなかった。恐らく大猿の呪いが掛かっているんだろう」
「なるほどな」
1つ頷くと現実逃避から帰って来ないマルコの方を向く。
「マルコ、毛玉を甘やかすのはそこまでにして、今はやるべき事をやるぞ」
「ネムはここが好きだな」
「マルコ!」
「ここも…えっ? 何?」
「こっちだ」
「え? あ、ああ。分かった」
「め゛ぇー」
毛繕いを止めると、ネムが不満げに鳴いた。
「えーと、この人は?」
「多分」
「そうだろうな」
「嫌な思い出が蘇るな」
詰所の中でぐったりしている、緑と金の髪をしたエルフを見下ろす4人。
「早くしろ」
険の抜けないクアトロ。
「うーん……まぁこの人でいいか」
「まあ…マルコがいいなら」
「1分ぐらいチャージしてみればいいんじゃないか?」
「よし、やってみよう、ネム!」
「メー」
「チャージ!」
ネムがふわふわと浮かぶ。
「なぜ浮かぶんだ? 盾になるのも難しいぞ」
ネムがぽわぽわと光る。
「こんなに光ったら狙って下さいと言ってるようなものだし」
ネムがむくむくと膨らむ。
「オマケに的がデカくなるんだからな」
「何度見ても、見事よね」
「非効率の暴風雨」
「こんなものにシェスタが負けるなど有り得ん」
顔を顰めるクアトロ。
しかし、現実は残酷だった。
「スレプフリープス」
ポゥ…ポゥ…ポゥ…
「お?」
たった3度でエルフがふぅっと眠る。
「「おおっ」」
「……バカな! そんなバカな!」
「このままズラせないのか?」
結果に驚くことなく、フェノンはマルコの腕をグイッと隣のエルフに向ける。
「「おおっ!」」
なんと、光は消えずにそのまま隣のエルフに術をかけ続ける。
ポゥ…ポゥ…ポゥ…ポゥ…ポゥ…
「「おおおっ!」」
隣のエルフもすうっと眠りに落ちる。
「ほらな」
さもありなん然とするフェノン。
「できた! 出来たぞ! ネム!」
「メェー!」
いえーいとハイタッチするマルコとネム。
「まあ、戦闘中にポンコツ魔法なのは変わらんけどな」
3回目のハイタッチは空振りしたマルコとネムだった。
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