第24話


 今後も食材を安定して採取することができるよう、森の中をしっかりと調査していくことにした。

 以前から高級な野草の群生地なんかの場所は覚えていたけど、今回からは食用でいけるものは全てきっちり把握してしまうつもりだ。


 ただ、僕はさほど記憶力が高いわけじゃない。

 それに今後皆と情報を共有することも考えて、僕はこのバナール大森林の正確な地図を作っていくことにした。


 使うのはシェフと一緒に開発した、新たな紙――植物紙だ。


「いやぁ、好きなだけ紙が使えるって素晴らしいねぇ」


「……(ふるふる)」


 自分の作ったもので喜んでいる僕を見て、シェフが嬉しそうに身体を震わせた。


 大量に伐採して、堆く積まれるほどに余った木材。

 この処理の方法に僕達は頭を悩ませることになった。

 冬に備えるために生木を乾かして薪にしたりは当然しているし、今後のことも考えて追加で家を二軒ほど建てて中の家具もしっかり木造で作った。


 けどそれでも余る。

 そりゃもうとんでもない量の木材が余った。


 場所だけ取っている木材の使い道をああでもないこうでもないと考えながら色々と試行錯誤した結果生み出されたのが、この植物紙だ。


 スライムが持っている溶解の力で木材を繊維に溶かし、それをシェフの体内で薄く成形する形で完成したこの植物紙。

 今ではシェフも大分作るのに慣れたようで、木をまるごと一本飲み込んだら数秒もしないうちにぺぺぺぺぺっとものすごい勢いで紙を生産してくれる。


 以前税金の申告の際に使っていた植物紙と遜色のない、十分売り物としても通用できるだけの代物だ。


 ちなみにシェフに頼りっきりだと将来的に困るだろうということで、現在はシェフに溶解液だけだしてもらってなんとかマーナルムの皆だけで紙が生産できるようにならないかと色々と試行錯誤している最中だったりする。


 スライムの溶解液は結構安く買えるので、将来的には彼女達の収入源になってくれるはずだ。

 ……まあ、そもそも交易すらしてない現状じゃ収入もへったくれもないんだけどね。


 今日もシェフとマックスと一緒に森の中を歩きながら、水路を作る片手間に地図を埋めていく。

 集落の場所川の位置、採取頻度の高い野草の群生地とおおよその森の概形。


 地図の中にはまだこれしか書かれていないのでかなりシンプルだけど、徐々に埋めていくのはなんだかゲームをしているみたいで面白い。


「お、カスミダケ発見っと」


 僕は白い雲をキノコの形に押し込めたような、真っ白なキノコを採取してリュックの中に入れる。


 ――現在僕は、地図を埋めるのと並行してキノコと果物が食べられるかどうかの実験も開始している。


 今僕が採ったのはカスミダケといって、ネズミを使って実験した中で、一番毒が強かったキノコだ。

 食べるとすぐに身体がビクビクと痙攣しはじめ、あっという間に死んでしまう。


 毒は有効な攻撃手段の一つだ。

 もう少し集まったら刻んで煮詰めて、しっかり毒を作ろうと思ってるんだよね。


「……(バクンッ)」


「ちょ……シェフッ!? ダメだよ、今すぐ吐き出してってば!」


 なんと近くに生えていたカスミダケを、シェフが食べてしまったのだ。

 必死になって吐き出させようと駆け寄って身体を押し出そうとすると、問題ないという感じで身体を震わせる。


 シェフはぐるぐると身体の内側を回転させたかと思うと……ぺっと何かを吐き出した!

 そこにあったのは……


「これは……木の、容器?」









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