第22話


 ウールはこの集落での存在感を日々増していた。


 彼なりに(一応確認したところ、ウールは雄だった)一生懸命コミュニケーションも取るようになっており、皆もそれをしっかりと好意的に受け止めてくれている。


「きゅっ!」


「わふ」


「きゅっきゅっ!」


「あおーんっ!」


 回復魔法を使い、シルバーファング達の傷を癒やしているうちに、ウールとシルバーファング達はずいぶんと仲良くなった。


 傍から見ていると好き勝手に鳴いているようにしか見えないが、どうやら意思疎通もしっかりと取れているようだ。

 傍から見ていても、最初と比べると仲が良くなってるのがよくわかる。


 ちなみにうちの集落で一番怪我をすることが多いのは、シルバーファング達だ。

 個体としてそこまで強くないので、警戒中に戦闘になるとどうしても怪我を負ってしまうんだよね。


 魔物だから回復力自体は高いので今までは何日か痛みに耐えながら休んでもらう必要があったんだけど、ウールの回復魔法があるおかげでその必要もなくなった。


 ちなみにシルバーファングの次に怪我をするのは、走り回ってあちこちに怪我をしてくる子供達だ。なのでウールは子供達とも仲が良い。


 彼がマスコットみたいな見た目をしていることもあり、子供達からの人気はべらぼうに高いといっていいね。


 ちなみにエイラちゃんだけは狩人の目でウールを見ていて隙あらばモフろうとしているが、そのせいかウールは彼女のことが苦手なようだ。

 世の中というのはままならないものだよね、ホントに……。


「……(にゅるん)」


「え? ……ああごめんねマックス、ぼうっとしてた」


 ちなみにそんな風にウールが皆に受け入れられている間に、僕らは住む領域の拡張を順次進めていた。


 以前イリアが言っていた広場は既に作っているんだけど、片手間に作ったものだからスペースとしてはいささか狭かった。

 なのでそこを畑にして潰してしまい、本格的に身体を動かせる場所を作っているのだ。


「私達獣人は子供の時に、安全な森を使って身体の扱い方を覚えるのです」


 とウィチタに言われたのがきっかけだったりする。

 なんでも獣人達は小さな頃から森に入って、遊びの延長として狩りの方法を実地で学んでいくんだって。


 魔物が棲息しているバナール大森林では同じ事はできないが、せめてそれなら似たようなことができる場所を用意してあげたい。

 そんな風に思い、頭を捻らせながら作っているのだ。


「よし、こうしてつるを編んでいってっと」


 木々に絡みついているつるをしっかりと編み込めば、かなりの強度のロープを作ることができる。

 ロープを作ったらそれをしっかりと樹にくくりつけていく。


 ぶら下がってグルグルと樹の周りを回転することのできる遊具の完成だ。

 ただこれだけだと物足りなかったので、次にロープを二本の樹の間にくくりつけ、綱渡りができる施設を作る。

 マックスに作ってもらったふかふかの盛り土のおかげで、地面に落ちても大丈夫なように作ってみた。


「やっ、ほっ、とっ」


「へっへーん、俺が一番早いね」


 ただ流石獣人というべきか、子供達は皆落ちることもなくするすると遊んでいる。


 これら以外にも滑り台や簡単なアスレチックなんかも作ってみたんだけど、どれもかなりの好評だった。



 ちなみに幼い子供達が身体を動かす場所だけではなくて、年長組やあと少しで成人する子達向けの実践的な訓練施設もそろそろ制作に入る予定だ。

 命の危険がない状態でしっかりと基礎的な鍛錬をするのも大切だからね。


 それが終わったらいざという時の食料の保管庫や、燻製をしても煙をもくもくと立てないようにするための小屋なんかも作りたい。

 ゆくゆくは木炭の製作なんかもできたらと思っているし、あと魔物の皮をなめしたりするための家もほしい。


「ふふっ、やることがいっぱいあるなぁ」


「……(ぽよんっ)」


「……(にゅるんっ)」


 僕ははしゃぎながら遊具で遊んでいる子供達の歓声を背後に聞きながら、再びシェフとマックスと一緒になって作業を再開させるのだった――。







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