第8話


「「「あおおおおおおおおおおんっっ!!」」」


「うわああああっ!?」


 夜、いきなり聞こえてきた遠吠えの大合唱に目を覚ます。

 すわ魔物の襲撃か、と従魔達と急ぎ外に出る。


 するとそこには、小屋を包囲するように展開している狼達の姿があった。

 暗くてよく見えないが、見た目はシルバーファングに似ているような気がする。


 既にウィチタさん達も準備をしているようで、戦闘体勢を整えている。

 僕も合流して一緒に戦おうとしたんだけど……それに待ったをかける存在がいた。


「わふっ」


 金色のシルバーファングであるジルだ。

 ジルは尻尾で軽く僕を撫でると、そのまま狼達の下へ歩いていく。


 ジルの足取りは軽かった。

 一人でいかせるのは危険だと思うんだけど、僕が止めようとするよりジルが駆けていく方が早かった。


「あおおおおおおおんっ!」


 ジルが遠吠えをする。

 すると包囲している狼の中から、一体の狼が出てきた。


 他のシルバーファングと比べると一回りほど大きな個体だ。

 恐らくあれが、群れのボスなんだろう。


 ジルとシルバーファングが向かい合う。


 そして戦いが始まった。

 ジルは勝った。












「――いや、勝っちゃった!?」


 勝負は一瞬だった。

 ジルはボスの鼻先に噛みつき、そのまま前足で押さえ込んだ。


「がるううううっっ!!」


「きゃ……きゃんきゃんっ!」


 ジルとボスがしきりに鳴き声を上げている。

 その内容まではこちらに伝わってこない。

 けれどみしりとボスの顔にジルの前足がめり込んでいく度に、ボスの声は弱々しくなっていった。

 そして最終的には……


「くぅん……」


 ボスシルバーファングは立ち上がると、ひっくり返って仰向けになり、でろーんと無防備なお腹を見せた。

 どうやらこれが狼にとっての服従のポーズらしい。


 ボスに倣って、他のシルバーファング達も同じようにひっくり返る。

 全員が同じ姿勢を取っていることを確認してから、ジルがちらりとこちらを向く。


「わふっ」


 シルバーファング達を従えたジルは、なぜか誇らしげな顔をしていたのだった。




 深夜にシルバーファング達の襲撃のあった翌日の朝。

 僕とウィチタさんはどう後始末をつけたものかと、頭を悩ませていた。


「うーん……ウィチタさん的には、どうしたらいいと思います?」


「どう、しましょうか……」


 僕らの目の前には、胸を張っているジルと彼の後ろに控えているシルバーファングの群れがいる。

 その数は合わせて二十五匹。ものすごい大所帯だ。

 どうやら彼ら、ジルのことを完全に新しいボスだと認識しているらしい。


「「「わふっ!!」」」


 どうやらしっかりとジルの薫陶が行き渡っているらしく、狼達はこちらを見ても吠えたりするようなこともなく、ジッとその場で待てをしている。


 昨日勢いでふんぞり返っていたボス狼なんか、ジルの右腕みたいな感じですごく自然な感じでスッと後ろに控えているし。


「ジル、危険はないんだよね?」


「わふ」


 任せて、という感じで頷かれる。

 どうやらこのシルバーファングはジルと、彼を従える『テイマー』である僕の言うことならしっかりと聞いてくれるらしい。


「狼は鼻が利くし、ジルと同様魔物なんで睡眠時間もほとんど必要がない。僕の従魔達の負担を減らす感じで、警戒をしてもらうことにしようかな」


「ばうっ! ばうばうっ!」


「「「わふっ」」」


 狼語(でいいのかな?)翻訳をしてくれたジルのおかげで、彼らとしっかりとコミュニケーションを取ることができた。

 どうやらシルバーファング達はしっかりと餌を与えてあげれば、周囲の警戒をやってくれるらしい。


 僕の従魔で警戒と護衛を同時にするのには、限界もあった。

 警戒だけでもシルバーファング達にやってもらえると大分楽になる。


 シェフやマックス達にはものづくりでも色々と活躍してもらいたいし、彼らにはしっかりと頑張ってもらうことにしよう。


 ということで僕らの仲間に、新たにシルバーファングの群れが加わり、僕らの生活はますますにぎやかさを増していくのだった――。








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