第30話 万歳!!!


 部屋に明かりがついている。


 その明かりの正体は、パソコンのランプだった。


 パソコンの画面は真っ黒になっていて、スリープモードが発動していた。


「あぁ、そういえば……」


 SNSで募るために使用していたパソコンの電源を切るのを、忘れていたんだったな。

…どうせまた使うから、放置でいいか。


 なぜまた使うかって、完全に僕はこのやり方に味を占めていたのだ。


 ―――――――――――――――


 ×月○日


 B子、C子、D子、E子、F子を次々に殺害した。


 僕は彼女たちの頭部が入ったホルマリン漬けの容器を……一つ一つ見ながら回想していく。


「B子さん……」


 この子は、高校生で。友達の想い人の意中の人が…自分だったことで。その友達や周囲から…イジメを受けるようになり…そのことがショックすぎて自殺したいと考えて…だから…殺してやった。


「C子さん……」


 小さな町で…商店員をやっていた20代女性…で。周囲の民家の草むしりやゴミ出しを手伝っていたら、いつのまにか強制的にやらされるようになり、それに抗議したら村八分にされた。ゆえに自殺したいと考えるようになり…僕が殺してやった。


「D子さん……」


 20代のエステティシャンの女性。経営者に無理なノルマを課せられ、顧客に不当に商品を売りつけたり、サービスを受けさせたことを半ば強制された。そのことに疲れ、罪悪感を…抱き…やがて自殺に思いいたる。ゆえに、殺してやった。


「E子さん……」


 この子は、大学生で。…サークルの好きな先輩と付き合えたと思って、付いていったら、部屋に他の男もいて、回された。男が信じられなくなり、やがてショックすぎるあまり自殺を考えて、僕が殺害した。


 ちなみに、目の前の僕も男だがいいのかと聞いたが、それは最期だから深く考えずに済むからどうでもいいとのことだ。


「F子さん……」


 20代女性、シングルマザー。…偶然用事が3回重なり予定を合わせられなかったことで、ママ友から仲間はずれにされ、メッセアプリでも裏で誹謗中傷を受けた。子供も被害にあったら嫌なので親戚に預けたとかしてるうちにそのうち疲弊し、自殺を考えて。僕が殺した。殺してやったんだ。



「いやぁ、素晴らしいな」



 飾った首はコレクションとでも言えばいいか?


 彼女コレクションってやつか?


 ハーレム気分だった。…いや…気分じゃなく…実際にハーレムだ。いたせりつくせりだ。


 さらに言えば、彼女たちの身につけていた金品やカバンも奪って売り払った。利益にした。

それでいてハーレムなんだから…


「自殺大国日本、万歳!! 自殺大国日本、万歳!!!」


 僕は大声を上げた。


 ―――――――――――――――


 ○月×日


 僕はこうして6人の女性を殺害したわけなんだが。


 ついに7人目の自殺者を募って…


 すると、一人の女子高生が…反応してくれて…。



 その女性…G子さんは、僕の家に来て、こう言った。「私を殺してください…」と。


「殺してくださいって、何かあったんですか?」


 僕は自殺の理由に興味を持ち、尋ねた。


「……両親が……ある日、いなくなってたんです……」

「…そうですか」


 …いわゆる、蒸発、というやつだろうか? 何やら事情がありそうだった。


「その…父親が…ギャンブル依存症で……借金残して失踪したんです…。しかも、母親も…失踪して……」

「そういうことが…」

「はい……。私は、完全に両親から見捨てられたんです……。ショックが…大きすぎて…」


 そしてG子さんは、望みを失ったような表情で言った。「…生きる気力を…失いました」と。


 …なるほど。こうして彼女は…自殺という最終的方法にたどり着いたのだろうと僕は考えた。




 …さて…どうしようか……?

助言や説得でもすればいいのか……?


 例えば、「親戚に相談してみるのはどう?」とか。そうしたら、もしかしたらG子さんは、親戚の返答次第で自殺を思いとどまるのか? 可能性はあるのかもしれない。



 だが、そんなことはもうどうでもいい…。死にたいと思った人間は素直に殺してやるのが人間の慈悲としか、もはや言いようがなかったというか…。


 というわけで。いつものように睡眠薬を飲ませて、G子さんを絞殺しようとした……



 その、ときだった。



「あ…待ってください…」

「え…?」

「やっぱり…自殺はやめます…」


「……は?」



 今までとは違った展開に、僕は、頭の中が真っ暗になった。


「その…おじさんのことを考えちゃって…」

「おじさんって……誰です?」

「母親の弟で…。今…あたし、その人の家にお世話になってるんです」

「…そうだったんですか。…その人には、ここに来るって告げました?」


「はい…。そのときのおじさんの顔が浮かんで…やっぱり、まだ生きるのをあきらめるには早いって思って…」

「つまり…今から帰るってことですか?」

「はい…そういうわけで、自殺のほうはやめることにします」


「何言ってんだ?」

「…え…」



 僕は立ち上がり、見下ろした。



「今更…やめられるとでも思ってんです? …自殺に合意してこの家に来た時点で……もう死ぬことは、決まってんですよ?」


 激昂しながら僕は静かに言うと、G子さんは表情が一変した。



 そして――




「い……いや……っ!!!」




 女性は駆け出し、玄関に向かおうとした。急いで…駆け出していた。


 その途中の廊下で、僕は追いつき、両肩を思いっきり掴み――


 再び動かれる前に、僕は素手で


 女性の首を 絞め上げた


「あ……!!あ…あ゛あ゛…っ!!!!」


 …声にもならない悲鳴を上げ……本当に必死に抵抗してきて……生きたいという…必死の思いが伝わってきた…。


 けれど、それで僕が手をゆるめるはずもなく…


 やがて…


 女性は痙攣を起こした後、全く動かなくなった。



 そうして…床に崩れ落ちた



 …顔に手を近づける…息はなかった…


「人って、案外簡単にヤれるんだな…?」


 ロープではなく、素手で絞め殺したのは初めてだったが、意外といけるもんだな…?


 …とにかく…よかった…。また一人、彼女を確保できたんだ…!


 だが…いいことばかりでもない。


「この女……確かおじさんに、ここに来るって…言ったんだったよな…?」


 僕は…すぐさま引っ越しの手続きに入った。


 なぜなら。同居していた親族に通報される可能性を考えたからだった。


 …ここの場所が突き止められるかは、ここの詳細な住所を、どこまでG子さんが伝えたかにもよるんだが……


 いずれにしても、この場所にこれ以上とどまるのはまずい。捕まるのは防ぎたいからな?



 こうして僕は…引っ越した。



 あるアパートの503号室へ…。



 もちろん、7人の彼女の頭部も一緒に……



 当たり前だよな…彼女なんだから…


 ―――――――――――――――


 ×月○日


「…新たな入居先でも殺してやるぞ…」


 僕はその場所に、8人目を呼び出した……


 中手川サキさん、23歳を……



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る