第14話 …フラッシュバック


「もう…言い逃れはできないぞ…!!」


「……」


 早紀は…静かに僕を見つめる。


 そして…


 口を開いた。


「そうだね。あたしがやったんだよ」


「認めるんだな??」

「認めるも何も、監視カメラまであるんなら、もう何も言いようがないし」

「そんなものはない」

「……?」

「監視カメラなんて…無い」


 それに早紀は苦い表情で…返す。


「…あぁ、そういう。ハッタリで…あたしの自白を誘ったってことなの?」

「そうだ。……なぁ、もう一度聞くが、認めるんだな??」


「…認めるって。…謙吾くんの彼女じゃないってことも…含めてね」


 直後、観念したかと思うと早紀は…ニヤリと笑う。悪魔的な表情だった。



「ねぇ…。勝ち誇ったような顔してるけどさ…。そもそもこの食事を食べた時点で…謙吾くんの負けなんだよね」



「え…」


 恐怖を抱きつつ、なんだか眠くなる。


「…昨日の時点で、あたしが疑われてたのは、謙吾くんの顔見てて分かってたから。…もう潮時かなあって。…今日、謙吾くんを眠らせるつもりでここに来て正解だったよ……」


 睡眠薬を盛られたのだと気づいた頃にはすでに手遅れで…椅子から崩れ落ち、僕の意識は沈んでいった…。



 ……


 …


 ふと目を覚ます。直後、体の自由が利かない感覚が……僕を襲った。


 両手・両足がロープで縛られてる……全く動けない……。かた結びにして強く縛ってるのだろう…自力で抜け出せるとは…もはや思えなかった…。


 視界には早紀が。すぐそばに立っていて…ナイフを持っている。



 ……天井の照明が…手術室の光のよう。


 ……医者に見下ろされてるような感覚だった……


 …ナイフが、天井の照明を反射して鈍く光ってるのが印象的だった…。


「寝覚めはどう? って…良いわけないよねぇ…?」


 その言葉に、もはや気づかいの類いは… 一切感じられなかった…


「そのナイフは…何だ…」

「何って…殺すために決まってんでしょ?」


 坂島謙吾の彼女を演じてない早紀は…こんな感じなのか。これが…僕に対する自然な態度だったってことなのか…。


「どうしてこんなことを……ってか、キミは…何者なんだ…?」


「…そりゃ、あたしのことは分かんないよね。あんたとは面識もないんだし」

「…?」

「でも…この名前を言えば、さすがに何か思い出すんじゃない?」


 そうして早紀は…まるで大切な人の名前をつぶやくかのように……厳かに口を開く。


「……花村佳奈はなむらかな



 はなむら…かな…?



 はなむらかな?



 …その人名を聞いて、僕は、死にそうなくらい異常に心がざわつく。



 とても、とても、とても、とても、なつかしく幸せな気持ちに…なっていく!!


「あたしはね……花村佳奈の…妹なんだよ…」


「……っ…!?」


「…あんたは…お姉ちゃんにひどいことをした…。本当に…ひどいことをした…ッ!!!」


 そして早紀は… 憎悪の眼差しで 絶叫した。



「これはあたしの……復讐なんだよ…ッ!!!!」



 そのときだった。


 点と点が結びつき線になり、その線が交わり……思い出していく。


 頭の中で瞬間的に映像が繰り返され、花村佳奈さんの顔を次々と想起していく。



 スマホの中に大量にあった写真の女性の名前が、花村佳奈さんであったことも思い出していく。



 大和撫子のように着物を着たVtuberの姿が重なった。和服美人。


「あ…あぁ…っ!」


 なぜか僕は声を発していた。

それは歓喜か、それとも……



 …彼女に一体何をしたのか


 何を…してしまったのか


 僕は 過去の記憶を思い出した



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