第9話 死


「というか、何でパソコンが点滅してるんだ…?」


 白画面と黒画面を交互に繰り返している。


 何だこれ。僕はこんなモードにした覚えはない。

そもそも僕は昨日、パソコンをつけてすらいないはずなんだが…。誰かつけたのか?


「っていうか、19時配信って何だ……?」


 具体的な開始時刻が…頭に浮かんできて驚く…。だって僕は…配信をしてた覚えなどないのに…。


 …頭の中がぐちゃぐちゃになりそうで…

なんかもう考えるのが面倒になった僕は、パソコンの電源ボタンを長押しして強制終了させた。


 パソコンは 静かになった。



 さて、翌日以降も


 僕は自殺者を募り、その女性たちを殺害した。


 5人!!!


 B子、C子、D子、E子、F子を次々に殺害した。


 僕は、彼女たちの頭部が入ったホルマリン漬けの容器を……一つ一つ眺めた。


「この頭部はB子さん……」


 20代女性、施設従業員。その施設の入居者に暴力を振るわれて。告発したら解雇すると責任者に脅された。そのうち精神も含め疲弊し、自殺に思いいたる。ゆえに殺してやった。


「C子さん……」


 20代女性、シングルマザー。メッセアプリの返信に遅れたことで。やがてママ友から仲間はずれにされ、その後ストレスのあまり子供に熱湯をかけたりし、虐待。その罪悪感も半端なく、自殺したいと考えるようになり、僕が殺してやった。


「D子さん……」


 パートタイマー、20代女性。夫が冤罪で捕まり、自身もその対応で心身ともに限界が来て入院した。そのためやむを得ず夫との合意のもとに離婚することになったが。新たな証言が出てきて夫は無罪になり、夫を見捨てた酷い人間として周囲から罵倒され続け、やがて自殺を考え…僕が殺害したのだ。


「E子さん……」


 この子は…女子大生で。彼氏に、投資に必要とお金を要求されて、様々な金の工面に走った。違法なことにも手を染めた。が、お金を渡してから、音信不通となり…騙されていたと気づく。そのことがショックすぎて自殺したいと考えるようになった。だから、殺してやった。


「F子さん……」


 20代女性、看護士。男の若い医者に話しかけられたのをきっかけとして、婦長に目をつけられてイジメを受けた。ついには同僚さえかばってくれなくなり、疲れ果てて自殺を考えて。僕が殺した。殺してやったんだ。



「あー!! 素晴らしい!!」



 いずれの女性も、睡眠薬を飲ませ、眠らせた後に絞殺した。


 「痛みを覚えないよう…一瞬で殺してください…」という女性の願いをまたしても叶えたんだよな!!


 興奮するしかなかった。


 相手はお望み通り死ぬことができるし、僕は彼女を作れる。

…お互いの利害が一致しているのでは…?!


 誰かに言い訳するように彼女たちを見つめ…


 もはや習慣であると言わんばかりにSNSで…

ついには7人目の自殺者を募り、すると、一人の女子高生が…反応してくれた…!



 その女性…G子さんは、僕の家に来て、こう言った。「私を殺してください…」と。


「殺してくださいって、何かあったんですか?」


 僕は自殺の理由に興味を持ち、尋ねた。


「……両親が……ある日、いなくなってたんです……」

「…そうですか」


 …いわゆる、蒸発、というやつだろうか? 何やら事情がありそうだった。


「その…父親が…ギャンブル依存症で……借金残して失踪したんです…。しかも、母親も…失踪して……」

「そういうことが…」

「はい……。私は、完全に両親から見捨てられたんです……。ショックが…大きすぎて…」


 そしてG子さんは、望みを失ったような表情で言った。「…生きる気力を…失いました」と。


 …なるほど。こうして彼女は…自殺という最終的方法にたどり着いたのだろうと僕は考えた。




 …さて…どうしようか……?

助言や説得でもすればいいのか……?


 例えば、「親戚に相談してみるのはどう?」とか。そうしたら、もしかしたらG子さんは、親戚の返答次第で自殺を思いとどまるのか? 可能性はあるのかもしれない。



 だが、そんなことはもうどうでもいい…。死にたいと思った人間は素直に殺してやるのが人間の慈悲としか、もはや言いようがなかったというか…。


 やっぱりいつものように睡眠薬を飲ませて、眠らせてから、G子さんを思いのまま絞殺した。


 そうしていつものように首を切断し、ホルマリンの浸った容器に入れ、部屋の棚に飾ったのだ…。


 喜びがあふれる。


「気づいたら彼女が7人もいる…ぞ」


 A子さん…B子さん…C子さん…D子さん…E子さん…F子さん…G子さん…


 全部で7つの生首が…こちらを見つめている。

…このような彼女コレクションには感情が高まったし…とてつもなく興奮するしかない。


 僕は 彼女を何人も作った。


「……」


 ……


 …?


 ふと、我に帰る。


「彼女がいるのに、何で僕はこんなことやってるんだ…?」


 よく考えたらおかしな話である。

だって僕には…白谷早紀って彼女が…



「…あれ? 白谷早紀って誰だ…?」


 聞いたことがない名前なんだが…。


 …僕はボーッとした思考を振り払い…改めてもう一度… 7つの生首のほうを見る。


 すると、なんだか段々…冷静になっていく。


 この光景は何だ?

…何で、人間の生首が7つ飾ってある?


 答えは、僕が殺したからだ。


 …殺した


 …殺した?


 殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した



 自身の罪に発狂しそうになった



「あああああああああああああああーッ!!!!」


 そう叫んだところで。目が、覚めた。


 僕は 部屋のベッドの上にいた。

…時計は深夜の3時を指していた。



 …なんだ、夢か。



 7人を殺害する夢とか、とんでもないな…。


 …?


 ちょっと待て…


「どこからが夢だったんだ…?」



 そのとき。


 押し入れから、ゴロンと音がした。



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