「荒木飛呂彦の漫画術」「荒木飛呂彦の新・漫画術 悪役の作り方」を読みました

 前々回の雑記でキャラの作り方に悩んでおりましたが、その解決の糸口にならんかなーと思い、表題の2冊「荒木飛呂彦の漫画術」「荒木飛呂彦の新・漫画術 悪役の作り方」を購入・読了しました。

 https://shinsho.shueisha.co.jp/specials/arakimanga/

 https://shinsho.shueisha.co.jp/kikan/1238-f/

 書名の通り「ジョジョの奇妙な冒険」等で著名な漫画家の荒木飛呂彦先生が、自分の創作術について語っておられる本です。


 なぜこの2冊を選んだかといえば、荒木先生は人物の詳細な履歴書を埋めていく方式(書中では「キャラの身上調査書」と呼んでおられますが)でキャラクターを作っておられると聞いていたので、この本を読めば履歴書方式のエッセンス部分……すなわち「何のために履歴書を作るのか」「履歴書からどうキャラクターを立ち上らせるのか」がわかるのではないかと思ったのです。


 前々回雑記でも書いたように、私はいくら履歴書の項目を埋めてもキャラが出てこないタイプなのですが、だからこそ履歴書型の勘所を知って「それをどうやったら再現・代替できるか」が重要そうに思えたのです。「苦手な食べ物の栄養素は他の食べ物から摂ろう」「そのために栄養素を解析しよう」みたいな発想ですね。

 ジョジョは未読ですが、各キャラクターの存在感が強烈だとは伝え聞いているので、履歴書方式の成功例を学ぶにはこれ以上ないテキストであろうと思いまして。



 で、読んでみて。

「漫画術」の方が基礎理論、「悪役の作り方」は応用編、という感じですね。「漫画術」は原則を説き、「悪役の作り方」はそれを用いて、実際にどうキャラクター等を作っていくかを語っています。

 なので「漫画術」→「悪役の作り方」の順序で読むのが最適解と思われます。「悪役の作り方」内には「ここは『漫画術』で説明しましたが~」的な文言もちょくちょく出てきますので、その意味でも「漫画術」を先に読んでいることが前提の作りになっていると思います。


 そして目的であった「キャラクターの作り方」についてですが。

 思った通り非常に有益でした。履歴書はなんのために作りどう活用するのか、期待していた情報がきっちり書かれていましたので。



 以下は自分用の覚書です(自分にとって重要なところだけを自己解釈でまとめていますので、実際の内容は本を読んでお確かめください!)

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 履歴書メソッドの勘所は「核となる動機(何をしたい人なのか)をブラさない」ことと「キャラクター造形に矛盾を発生させない」点にあるのかな、と思います。

 荒木先生の場合は、履歴書の各項目から「こういう属性があるならこういう人格ではなかろうか」とキャラ造形をどんどん派生させていく形で、「悪役の作り方」の「実践編その2 一から悪役を作ってみる」が特に鮮やかな実例になっています。


 が、自分はこれがうまくできない。物語に放り込んで動かしてみないとキャラ造形が確定してこない。

 ただ、勘所がそこだとわかれば、同等の効果を得られる手法で代替できそうな気がします。

(履歴書メソッドには、あと1点「作れるキャラクターのバリエーションを増やす」という効果もあるようなのですが、これはおそらく商業デビューして何作も書くようになってから出てくる問題だと思うので、いったん置いておきます)


 幸いにも前々回雑記のコメントで、同じく物語に放り込まないとキャラが確定しないタイプの相互さんから「日常系SSを書いてみる」という解決策案をいただけたので、これが糸口になりそうです。

 また、現在読み進めている「文体の舵をとれ ル=グウィンの小説教室」のあとがきにも、著者のアーシュラ・K・ル=グウィン先生が長編を書く前に短編を書いていた話がありました。

 とすると、テスト用の短編を先に書いてみる作戦は、ある程度有効そうな気がします。


 と、いろいろ考えてみて、現時点で以下のような別解ができあがりました。


 ・最初に動機部分だけはしっかり作り込む

 ・動機部分にダイレクトに関わるような短編をお試しで書いてみる

 ・短編を書く間にキャラが立ち上がってくればよし、動かなければさらに短編を書いてみる

 ・キャラが掴めてきたら、その時点で考えられる設定を履歴書的なものにまとめる(後日の矛盾を防ぐため)


 カクヨムコン10向けの話には間に合わなさそうですが、その次の話で試してみようかと思っています。

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 漫画術の2冊、キャラクター造形以外の点でも色々と学びの多い本でしたが……

 中でも個人的に特に印象に残ったのは、荒木先生が「自分の好きなもの」と「少年漫画の王道」に折り合いをつけるためにものすごい思考と試行錯誤を重ねてこられたんだなあ、と伝わってくる点でした。

 自分の好きなものを描くと少年漫画としては受けない、しかし売れるものに迎合してもブレる、という状況下で、見事に両者を融合させた境地に達しておられるのが本当に凄かった。

 商業エンタメの第一線で長くやっていくには、この姿勢が必要不可欠だったのだろうなと強く感じました。


 そして女性向けライト文芸志望の書き手としては、女性向けエンタメ版の類書も読んでみたいところです。

 好まれる主人公のキャラクター像とか、物語のベクトルの向き方とか、少年漫画と他媒体では異なる可能性があるように思われるので。



 という次第で、次に読みたい本も決まりました。

「「好き」を育てるマンガ術 少女マンガ編集者が答える「伝わる」作品の描き方」

 https://www.filmart.co.jp/books/978-4-8459-2122-5/

 楽天の次回セール(来週)で買おうと思っています。楽天はセールが多くて助かりますね。

 少年漫画と少女漫画、共通するところも異なるところもいろいろありそうなので、そこがわかるのではと期待しています。

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