第15話

「来週はクリスマスだね」


「そうだね」


 来週の火曜日にクリスマスイブ、そして来週の水曜日にクリスマスがある。


 とはいっても火曜日も水曜日も、私は起きてはいない。そこでクリスマスイブの日、クリスマスの日に何があるか、私は知ることがない。


「来週の金曜日は27日で、再来週の金曜日は3日。だからもみじにとって、もうすぐ今年が終わっちゃうね」


「そうだね。なんだかあっという間です」


 私の人生には、金曜日の夕方しかない。そこで他の人よりも、うーんと生きる時間が短くて、その分月日が流れるのも早い。


 だから夢の中にいる間、クリスマスもお正月も終わってしまう。このことは仕方ない、そう私は思っているんだ。今のところ、金曜日夜以外に私が起きることはできないってことが、分かっているから。


「そういえばさ、べにははクリスマスどう過ごすのかな?」


「あたしクリスマスイブやクリスマスは仕事だから、知らない」


 夕占ゆううらさんはクリスマスイブやクリスマスも仕事らしい。


 べにはもクリスマスイブやクリスマス、仕事だろう。でもべにはは夕占さんよりも早く帰宅する予定なので、クリスマスイブを祝っているような気がする。


「クリスマスと言えばやっぱりケーキだよね、ケーキ。私ケーキ好きだから」


 なんならクリスマスを祝うことといえば、ケーキを食べる以外何もないと言っても過言ではない。


 野菜の肉巻き、中華丼。そういった今日の夕ご飯の感じからすると、クリスマスとはほど遠い。だから今日夕占さんはクリスマスを祝う気がないことは分かっているけど、私はケーキが食べたい。


 なんなら来週、クリスマスが終わった後でもいいから。


「そうもみじが言うと思って、実はケーキ用意していまーす。ショートケーキです」


「わーい、やったー」


 素直に喜ぶ。


 金曜日の夜にしか起きていない私はケーキを食べる機会があまりない。そこを考えると、ケーキを食べることができるなんて、幸せでしかない。


 ということで夕食後、私は夕占さんと一緒にケーキを食べる。


 夕占さんが用意していたショートケーキは、いちごの飾られたオードソックスな物だ。外側に負けず劣らず、いちごがクリームとスポンジでサンドされていて、とてもおいしい。生クリームは滑らかで甘く、スポンジもふわふわしている。うん、これはおいしい。


「いちごのケーキ、おいしいね」


「そうだね。もみじはいちごのケーキの方が好き?」


「なんとなーくいちごのことがかわいらしいとか、好ましいとか思えるから、それでいちごのケーキが素敵に見えるかもしれない」


 理由はよく分からない。でもなぜか他の果物よりもいちごの方が素敵に見えてしまうから、いちごのショートケーキにもテンションがあがってしまう。


「それはよかった。ところでもみじの部屋になんかすとぷりのグッズ、特に赤色のものが増えている気がするけど、気のせいかな?」


「それは知らない。買ったの私じゃないから」


 確かにすとぷりのグッズが増えているのは知っている。でも私がグッズを買っているわけじゃない。


 それはべにはなんだな。なんでべにはがすとぷりを好きなのか、それは私分からない。

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金曜日夜にしか会えない紅葉と みかさやき @sarayuhaomo

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