第4話 文披31題 Day12 チョコミント

「今日の服装は、まるでチョコミントみたいだね」


 夕占ゆううらさんは、私を少し驚いたように見ている。


「そうかな」


 青みがかった緑のカーディガンに、黒いワンピース。この取り合わせがチョコミントみたいに夕占さんは見えるらしい。


「そうそう。チョコミントって青っぽい緑に黒いチョコの組み合わせが多いから。もみじの今着ている服は、そんな感じがする」


「そう言われたらそうかもしれない」


 たまたまこの取り合わせで着ているのであって、チョコミントっぽくしたわけじゃない。


 でもチョコミントって名前がかわいいらしいから、別にいいや。


「そうだそうだ。お友達から変わった味をした柿の種をもらったんだ。もみじも食べてみて」


 夕占さんは柿の種が入ったタッパーを私に渡してくれた。


「へーどんな味なんだろう?」


 私はタッパーの中に入っている柿の種を口に含んでみる。


 なんか記憶にある柿の種よりもしょっぱい、というよりも塩辛い。うーんいつもよりも醤油増量の柿の種で、その結果変わった味になっているのかな?


「柿の種おいしかった?」


 夕占さんが笑顔で話しかけてきた。


「おいしい。いつもよりもしょっぱいけど」


「もんじゃ味だからね。そうかもしれない」


 どうやら今食べた柿の種は、もんじゃ味らしい。でももんじゃっぽさがなかったような気がしなくもないけど、これでいいのかな?


「そういえばいつか本当のもんじゃ焼きを食べてみたいな。奈良県じゃあもんじゃ焼き食べられるところ少ないだろうけど」


 せっかくもんじゃのことを思い出したので、食べたくなったのだ。


「生駒にももんじゃ焼きの店はあるよ。確か小明町にあるヒルステップ、あそこにもんじゃ焼きの店があるはず」


「あーあそこね。私の出身中学の近くにあるところだ」


 今は生駒駅の近くに私は夕占さんと一緒に住んでいることもあってか、ヒルステップに行く事はほとんどない。でも実家で暮らしていたときには、ヒルステップに行くこともあった。家族でヒルステップにあったサイゼリヤに行ったり焼き肉屋に行ったりしたし、何よりも中学に通っているときはその近くを歩くことが多かった。


「へー出身中学の近く。ていうことはその近くにある中学校に、もみじは通っていたんだ」


「そうそうもう10年以上前の話だけど」


 紺色のブレザーに、同じ色のボックススカート。そして何よりもそれに白いブラウスにえんじの棒ネクタイをあわせたという地味なブレザースタイル。私はセーラー服の方が良かったから、ぶっちゃけこの制服は嫌いだった。それに制服だけじゃなくて、学校自体も嫌いだった。


「へー私もいつかその中学校に行こうかな。もみじが通っていた中学校、気になる」


「絶対行かないでよね。ただのぼろいピカチュウだから」


 壁にぶつかったら制服が白く汚れ、特に強い部活もなく、1小1中であることもあって人間関係が固定されている、そして何よりも光明中学校だからピカチュウと市内で呼ばれているのだ。


 そういう中学校を見に行っても、楽しいことなんてないと思う。そう言いたいけど、楽しそうな夕占さんを見ると、言葉が何も出なくなってしまった。

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