第3話

「生駒市の避難指示、まだ解除されていないって」


 夕占ゆううらさんが夕ご飯の料理をしながら、話し始める。


「そうなんだ。早く解除されると良いけど」


 先週の金曜日の夜に起きた土砂崩れ。その影響で避難指示が生駒市の一部に出ていて、まだ解除されていない。


 避難指示が出たのと同じ理由でとまったけいはんな線は私が寝ている間に再開したのだけど、やっぱり住宅地から土砂を出すのは難しいのかな?


「確か本姫ほきさんが働いている図書館が、避難場所だって聞いたよ。本姫さんも避難している人の対応とかしているかもね」


「そうかもね」


 宇治うじ本姫は一応友達だ。でも宇治さんは夕占さんと仲が良いので、そこがうらやましい。


 いくら好きでも私が夕占さんと過ごすことのできる時間は限られているけど、宇治さんはそうじゃない。そこが本当にうらやましいんだ。


「そういえば先週よりも今日って暑いと思わない? 先週の金曜日は雨降っていたけど、今日はそうじゃないし。何よりも今日は朝から暑かった」


「暑さに影響を受けるのは出勤しなきゃいけないべにはや夕占さんの方だと思う。家の中は冷房が効いているし、先週よりもずっと暑くなった感じは私しない」


 暑くても寒くても出勤しなくちゃいけないべにはや夕占さんと比べて、家の中で短く生きている私はあまり外の気温に影響を受けない。


 なんせ私は完璧な、引きニートだから。外出することがない引きこもりで、仕事や通学などもしていない、夕占さんやべにはとは違ってね。


「でもこれからどんどん暑くなっていくと思うよ。電気代とかも高くなっているから、ぶっちゃけ冷房とか節約したい」


「そうだね。まだ7月で、これから8月が始まるから」


 週に1度しか生きていない私は、他の人よりも時間が進むのがはやい。そこであっという間に8月になって、なんならあっという間に寒い季節になりそうだ。


「とゆうことで今日の夕ご飯は、鶏肉のトマト煮とたまごと薄揚げのお吸い物です」


 料理が終わったらしい。なぜか丁寧語で、夕占さんが夕ご飯のメニューの紹介をする。


「あっさり系だ」


「今日暑かったから、あっさりとした物が食べたくなったの。あとデザートに、苺のアイスクリームを作ってみました」


「デザートなんて珍しい」


 デザートを夕占が作ったことなんて、今まで無かったような気がする。そこで今日なぜ作ったのか、それがかなり気になった。


「たまには作りたくなったの。今日は仕事が休みだしね、ちょっとした気分転換」


「気分転換ね・・・・・・」


 最近料理をすることがなくなった私には分からないけど、デザートを作ることは気分転換になるらしい。


 それにしても苺のアイスクリームね、夏というよりも春のイメージがあるけど、冷たいから夏にあうのかな?


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