9-1

 色々なことがうまくいかないときは、神頼みである。ということもあって、私は宝山寺へお参りに行くことにした。


 神頼みなのに寺へ行く、それに対して疑問を持つ人もいるかもしれない。単純に私の家から行きやすくて大きい宗教施設が宝山寺だからである。


 そこで昼前、自宅から宝山寺へ向かう。今日は土曜日、ということで昨日までフツーに仕事があった。体を固めようとする寒さの中、通勤する。それは辛い物以外の何物でもない。そして淡々と作業することも、しんどい以外の物でもない。


 なんか仕事では、異物が混入したと大騒ぎになっていた。その異物を混入させた人がいるんだけど、その事実は見捨てられて、異物をチェックできないのが悪いってことになっている。


 いやチェックをうっかりスルーすることはあっても、うっかり異物なんていれないからね。そこで異物をいれた人が一番悪いのに、なんでチェックした人が悪いみたいになってんの? もやもやする。


 そんなもやもやは歩いていても、解消されない。宝山寺へ行くのには家からだとすこーし時間がかかるので、道中でお昼ご飯。目玉焼き入りのホットサンドを食べる。


 目玉焼きの黄身がとろとろして、チーズのソースとの相性がばっちり。とってもおいしいからまた食べたいけど、このホットサンドはあまり見ないから難しいかもしれない。


 ホットサンドを食べた後も歩き続け、鳥居前駅に到着する。


 券売機を赤ちゃん連れの母と高齢の夫婦という家族っぽいグループが占拠していて、私が切符を買えない。一応券売機は二台あるんだけど、一台しか使っていないのにも関わらずそのグループは二台分の場所を占拠しているのだ。二台使っているなら仕方ないけど、一台しか使っていないのなら単なる邪魔だ、それで私はイライラする。


 何とか切符を買って、ケーブルカーに乗る。幸いにもケーブルカーの中はぎゅうぎゅう詰めではなくて、少し空いている。そこで私は空いている1人用の席に座った。


 そうしたらさっき券売機を占拠していたグループが、私の隣の席についた。


「おぎゃーおぎゃーおぎゃーおぎゃー」


 赤ちゃんが泣いている。うるさい。


「生駒山上遊園地はこの山の上にあるんですって」


「このケーブルカーに乗っていくのね」


 高齢夫婦が大きな声で話している。うるさい。


 とまあ赤ちゃんはただ泣き続けて、その泣き声に負けないくらいの勢いで高齢の夫婦が話していて、うるさかった。まあ赤ちゃんも高齢の夫婦も周りの人を気遣うことができないかもしれないから、それは仕方ない。


 そんなうるさい中、ケーブルカーはゆっくりと山をのぼっていく、少し経つと宝山寺駅へケーブルカーは到着した。


 さっきのうるさいグループは生駒山上遊園地向けのケーブルカーの所へと向かい、私か駅から出る。


 さきほどのうるささのせいで、耳が痛い。それでも宝山寺へ向かって、少しずつ私は歩いて行く。


 クリスマスツリーやトナカイなどの飾りを、通勤中に見たような気がした。キラキラと光るクリスマスイルミネーションを見るために、クリスマスなんだなって思った。 


 でもそんな感じ、今の宝山寺近くにはないようだ。

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