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豚肉とケチャップの野菜炒め、カレイの煮付け、ごはん、野菜サラダ。まずくはないこれらの食事をお腹につめこんで、夕ご飯は終了。
仕事を始めてから、心の底から食事を楽しむことができたことはない。疲れが常に脳の中にあって、楽しいやうれしいと考える余裕はない。そこで食事を楽しむということよりも、食事をお腹に詰め込むって言う方が正しい。
食事が終わったらお風呂。今日はお風呂にラベンダーの入浴剤をいれる。ラベンダーの入浴剤ってそういえばたくさんある。なんだろう、入浴剤といえばラベンダーなのかな? と考えつつ、お風呂に10分間入ってから身体や頭を洗う。洗い終わってから、ゆるゆると歯を磨いて髪を乾かす。
それらが終わってから、テレビをつける。
『生きててよかった あなたに出会えてよかった』
テレビでは音楽番組をしている。そして日本か韓国かそれ以外なのか、分からない人達のグループが前向きな歌を歌っている。
こんな前向きで明るい歌、私の心を苦しめる以外ない。
そういえば自分の意に沿わない行動をする人に対して、ひどいことを言う上司が韓国のことを好き。そんなことをふと、思い出してしまった。きっとその上司はこのグループが好きかもしれないし、こんな前向きで明るい曲も好きかもしれない。
人に対してひどいことを言う人が好きかもしれない、前向きな曲。と考えると、むなしくなってしまう。
分かっているこのグループには罪はないって。それでもこの前向きで明るい曲で、私の心は慰められない。上司のことが頭にちらつき、よけいに辛くなるだけ。
いや上司のことがなくても、前向きで明るい言葉は私を救ってくれない。
辛い、苦しい、しんどい。それらの言葉で人生はしめられていて、そこに前向きで明るい言葉が入る余地はない。
気がつけばグループの歌が終わって。そしてさっきまで歌っていたグループと似たようなグループが、これまた似たような前向きで明るい歌を歌い始める。
むなしい明るさ。それがひたすら続いていく音楽番組。それに対して、私の心が明るくなることはない。
だって私は知っている。前向きで明るい言葉が好きな人は誰も救わない。そういう人は前向きで明るい言葉にすがって、辛さや苦しさは見ないから。そこでそういう人は他人の辛さや苦しさに向き合うことすらしてくれないってこと、私はよく知っている。
だからこんな明るい曲なんてしんどいだけで。
例え他の人を前向きで明るい曲が救っても、私が救われることはない。むしろ私はこういう明るい曲で、不幸になってしまう。
生きることは苦しい、苦しい、苦しい、苦しい。それ以外のことなんて、生きることにありえるわけがない。
せめて苦しんでいる私を肯定してほしい。私の苦しみを分かって欲しい。
そんな願いを叶えてくれないのが、この世界だ。明るさで苦しさを塗りつぶそうとするだけで、助けてくれないってこと。私の苦しさや辛さを、この世界は認めてくれないってこと。
そこでここで歌われている曲達は、私を不幸にすることしかできない。
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