第2話 その後


『ニュースをお伝えします。


 昨夜未明、――にあるトンネル内で、男性の遺体が発見されました。被害者は都内在住で配信業を営む、木村和馬さん。26歳。警察の発表によりますと、背中を鋭利な……刃物のようなもので刺されていたとのことで、警察は殺人事件として捜査を開始しています』



「嘘だろ…?」


 僕は唖然としていた。


 なぜならニュースで…友達が遺体で発見されたと出たから。


 …木村和馬…僕の友達だ…


 ショックに苛まれてると、ピンポーンと呼び鈴が鳴った。



 玄関に向かい、ドアを開けると、なぜかそこには警察がいた。



斎藤洋樹さいとうひろきさん…ですね?」

「は、はい」


 僕は名前を確認され、合っていたので頷く。


 …なんだ? 僕に事情聴取に来たのか??


「昨夜の事件のことで聴きたいがありましてね」

「昨夜の事件って…木村和馬が死んだ事件ですか?」

「はい。あなたは…被害者とよく連絡を取り合う仲だったようで…合ってますか?」

「そりゃ、はい。大事な友達ですし…」



「何か、被害者の周辺でトラブルがあったという話は聞きませんでしたか?」

「え…?」



 そこで警察の目的が分かった。



 つまり警察は、この事件を怨恨の線で調べているということなのだろう。


「トラブルなんて、そんなの聞いたことはないです。…あの、一つ言いたいことがあるんですが…」


 僕は息を整え、言葉を吐いた。



「あいつは…木村和馬は。確かに、お調子者なやつではありましたよ。でも、決して人から恨みを買うような人間じゃなかったです」


 おそらく警察は、和馬に恨みを持つ誰かが…トンネル内であらかじめ待ち伏せをしていて、そこに和馬がやってきたところを狙ったと考えてるのだろう。



 が、僕は違うと思う。


「だから、これは無差別殺人ですよ…!」

「え…無差別殺人…ですか?」

「そうですよ。おそらくは、トンネル内に来た人間なら誰でもよかったとかで、常日頃からトンネル内に潜んでた変質者でもいるんじゃないんですか!?」


 ゆえに、そこを訪れた和馬は…運悪くその愉快犯の犠牲になってしまったんじゃないかと…僕はそう考えていた。


「…あくまであなたは、怨恨による殺人ではないと言いたいんですね?」

「はい。怨恨とか関係なく、愉快犯的な無差別殺人だと思います」

「…言いたいことは分かりました。ま、我々も可能性の一つとしては考えておきましょうかね」


 今の警察の目は。なんというか、適当に場を流してるような感じのものだった。


 僕の言い分は、あまり本気で捉えてはいない様子なのは明白で。


 これは…ダメだと直感で思った。警察に任せていては、今回の事件は解決しそうにないと。今後も怨恨の線で周辺人物に聴き込みを続けることをメインとし、無差別殺人の線で本腰を上げるつもりはないのだと見えた。




「僕が…なんとかしなきゃな」


 警察との話しを終え、部屋に戻った僕はそうつぶやく。



 ……そういうわけでこの日の夜……



 僕は…


 ……


 …殺人現場に来ていた。


 あの…ニュース報道に出ていた廃トンネルに来ていた。


 なぜなら。友達のカタキを取るために。


 もし無差別殺人という僕の考えが正しいなら…犯人は常日頃から、このトンネル内で待ち伏せをしているはずである。


 おそらく今も。


 だから、そこを竹刀で叩きつけるとかして、捕まえてやろうと思った…。


 僕は剣道の有段者ではあったから。それなりに自信はあった。友達のカタキを取るためにも必ず捕まえる…。



「…それにしても…」



 …あたりは真っ暗で……照明は無く……不気味な雰囲気が漂っている。



 すでに使われてない廃トンネルで、しかも夜なのだから、当たり前だ。


 …暗すぎて視界が悪いと、注意力が散漫になり、襲われやすくなる。


 犯人もそれが分かってるからこそ、夜に…犯行に及ぶ…はず…


 だからこそ、僕も夜という時間帯に来てるわけだが。捕まえるためにも、犯人には会わないといけない…から。



 ふと、何かの気配を感じて、僕は後ろを振り返る。

そこには、白い服を着た女性…? の姿が。



 ……いつのまに……?



 前髪は長く、顔はよく見えない。


 …幽霊? いや、そんなわけないよな。肝試しにきたけど、トンネル内に迷い込んでしまった女の子?


 というか…


 なんか、かがんでいて…?


 …具合でも…悪いのだろうか…?


 心配になった僕は声をかける。


「あ、あの…大丈夫ですか…?」




「はい……大丈夫です……」



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