第26話
とある山奥にひっそりと佇みつつそばに寄ると迫力のある屋敷の奥にその者はいた。
「玉藻にはしっかりと手紙を届けたのだろうな?」
言葉が終わると同時にその手に持つ葉巻を大きく吸い込み、煙を一息にそばにいた執事らしきものへと吹きかける。
執事はその煙に咳き込むこともなくなにもなかったかのようにその問いに答える。
「はい、間違いなく手紙は届いたと思われます。娘の稲荷殿が宛名の名前も確認しておりましたので間違いなく母上の玉藻様に手紙を渡したと」
「そうか、そうかあの狐もこちらの誘いを無下に断ることはあるまい。あの八咫烏に認められたという男ぜひこの目で確認せねばなるまい、ただの人間ごときに八咫烏様も興味をもつことはあるまいしな。 必ずその人間になにかあるはずだ」
「やはり、その人間になにかあるのでしょうか?よろしければ私どもの方でお調べいたしますが」
「いや、下手に調べに入れば必ず八咫烏様の耳に入るであろう。あの方の目と耳はどこにあるのか見当もつかん」
「分かりました。出過ぎたことを言ってしまい申し訳ありません」
「よいよい、数多くいる我が眷属の中でも最も信頼のおけるお前だ、私のことを思っての言葉だったのであろう。それであの娘はどうしている?」
「はい、それがそのなんというか……」
「よい、おまえの言葉であるならなにを言おうとも」
「なんの力もない人間ごときになぜ私が会いに行かねばならないのです。あちらが頭を下げてこちらに会いにくるというのならば会ってやるのもやぶさかではないですが」
「あの娘はまだ八咫烏様の恐ろしさを知らんし仕方ないかもしれんな、八咫烏様が気にする者と縁を繋ぐことはどれだけ貴重なことか」
「私からも改めて問題を起こさぬようには言っておきますので」
「お前には苦労をかけてすまないが頼めるか、さてあの狐を化かすのは苦労するであろうが人間の方はどうであろうな?久方ぶりの化かし合い楽しませてもらおうではないか」
「お館様の妙技を再び目に入れる日が来るとは長生きするものですな、お館様には敵いはしませんが私もお供いたします」
「はーまったくなんでこの私がたかが人間ごときに会いに行かねばならないのですか?お館様の命だから仕方なくついてはいきますが、そうだ私がその人間の化けの皮を剥がして会う価値のないことを示してやれば……そうすればお館様に褒めてもらえるかも、えへへ待ってなさいこの私が化けの皮を剥がしてやるわ」
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狐が嫁入りしてきてから魑魅魍魎と触れ合う日々が始まった(仮) ケンタン @kentan
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