第5話

 玉藻さんが、引っ越しの連絡をしてから程なくしてチャイムが鳴ったので玄関に向かうと


「まいど〜こちら阿部野裕二様のお宅でよろしいでしょうか?鴉引っ越しセンターからまいりました」


「はい、家で間違いないです。急な依頼で申しわけありません、本来なら事前に予約など必要だと思うのに」


「いえいえ玉藻さんからの依頼で話は、聞いていましたし、なにより稲荷のお嬢の恩人となればこちらは喜んで仕事をさせていただきます。この度はお嬢を助けていただきありがとうございます。裕二様にちょっかいだした馬鹿野郎共は、こちらの方でしっかりとお礼させてもらいますのでご安心ください」


 稲荷ちゃんは人気者だな。ここまで周りの人いや妖怪に慕われて一体何者なんだろう?

 俺には、ただのかわいい女の子にしか見えないが稲荷ちゃんの命を助けたとはいえここまでしてもらえるとは思わなかったし。


「玉藻の姉御ヤタ様からこちらを預かっております。どうか、お受け取りを」


「あのヤタが私に贈り物なんて珍しいわね。一体何を持ってきたのかしら?」


玉藻さんはヤタ様から預かった包みを静かに開けて中身を確認するとニヤッと口角を上げて高笑いをし始めた。


「ふふっふはっふふアハハハハ、まったくあの爺も抜け目が無いったらありゃしない。だけどせっかくいただいたんだから使わせてもらおうかしら」


「玉藻の姉御そんなに笑って一体ヤタの親父は何を渡したんですかい?」


「んっ見てみるかい?まっ物自体は特に面白いものじゃないがこれを持っているとわかったら周りはどう思うかしら」


 俺も気になって見てみるとそこには3本の足を持つ鳥が描かれたものがいくつかあった。


「これは八咫烏の家紋でね、これを持つということはその家の庇護下にあるってことなのよ。知っての通り八咫烏は大妖怪であると同時に導きの神としても扱われている。そんな庇護下にいるやつを襲ってみなさい、八咫烏の導きを邪魔した愚か者としてどんな目にあうことやら。あー怖い怖い、私がもし邪魔をしてしまったと気づいたらなにがなんでも八咫烏の元へむかって命乞いするだろうね。まっそれはあくまで力がない場合だけど」


八咫烏様は、一体何を思って俺にこんなのを送ったんだよ〜。完全に注目の的にしかならないんじゃないか?


「まさかヤタと考えが被るなんて思わなかったけどこれならこちらも遠慮なく出せるわね。ほら後で渡そうと思ってたけどこれももらってくれないかしら?」


 玉藻さんから狐のマークに9つの尻尾を描いた家紋を渡された。


「これが私の庇護下にいるとわかる家紋よ。白面金毛九尾の狐が私の別名 八咫烏と並ぶ私の家紋見たらどんな顔をするのかしら、ちょっと気になるわね。どこか適当なオバカさん引っ掛けようかしら」


 妖狐だと聞いていたからもしやとは思っていたけどまさかそんな大妖怪二人の庇護下に入るなんて、一体これから俺はどうなるんだ?


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