第4話

「ありがとうございます。おかげで娘を追放しないですみます。そうでした改めて私の名前は玉藻と申します。何でしたらお義母さんと呼んでもいいですよ、娘は稲荷と申します。親子共々よろしくお願いします。」


 まだ結婚をすると認めたわけじゃないからお義母さん呼びは早いかなーと思ったがあちらは冗談ではないのがまた困ったものだ。


「そうだ、そちらに自己紹介させておいてまだこちらはしてなかったですね。

 俺は阿部野裕二で現在は色々あって無職の男ですがこれからはまた頑張って行きたいと思います。よろしくお願いします玉藻さんと稲荷ちゃん」


「私達がいますから今後のことは大丈夫ですよ。それにしばらくは働かなくても生きていけるだけの余裕はありますから。それにしばらくはあまり出歩かないほうが宜しいかと、どうやら裕二様は祖先に強い力を持った方がいるみたいですね。懐かしい匂いがします。

 稲荷と繋がりを持ったことがきっかけで裕二様の中に眠る力が目覚めたようですね。そのおかげで稲荷も早く傷が癒えたみたいですから、運が良かったのかもしれません」


 俺自身は力がどうのこうの言われても正直さっぱりだが、稲荷ちゃん自身の傷が癒えたのは今この場にいることが証拠だから、あの出会いは運が本当に良かったんだと思う。


「ですが、強い力は時に余計な者を引き寄せたりもしますので気をつけてください。安全を確保出来るまではそれまでは私も近くにいますので、あっでも二人の邪魔はしませんから安心してくださいね」


 玉藻さんの安全確保宣言が出るまでは引きこもることにしよう。今の世のなかには通販で食材も手に入るから引きこもっていてもまったく問題はない。


「稲荷、人間の姿に戻りましょうか。あなたには今後なにがあっても動じず人間の姿を維持できるように常に人の姿でいてもらいます。もし狐だとバレたりしたらわかりますね?」


玉藻さんは笑いながらもなんともいえない雰囲気を纏っていた。後ろからゴゴゴと迫力のある音がみえそうな感じで。稲荷ちゃんもコクコクと人形のように頷いた。


「さてそれではまず引っ越しをしましょうか?二人で暮らすにはなにかとこの家では不便ですし、防犯も今のままだと不十分ですから。幸い裕二さんが荷物を整理してくれていたので楽に引っ越しは出来ますから」


いやいや、引きこもることを決意したばかりなんですがなぜそれが急に引っ越しになるんだ?これが狐に化かされるってことなのか?


「引っ越しは任せてください。知り合いに専門業者いますので手続きなんかも全てをこちらでしておきますから」


 そういうと玉藻さんはどこかに連絡を取りはじめる。連絡先に不安しか感じないのは俺だけなんだろうか?


「ヤタちゃん話した通り引っ越しの件お願いできるかしら?そう、その住所よ。荷物も少ないからそんなに大変なことはないから。え〜支払いは私宛でお願いね」


どうやら玉藻さんの中ではこの引っ越しも事前に予定として組んでいたみたいだ。完全に手のひらで踊らされているな。まっここにはどのみち長くはいれないと思っていたし心機一転新しいところで生活するのも悪くないのかもしれない。


「おまたせ、話はすませたから後は任せておけば大丈夫よ、信頼できる相手だから」


「あのちなみになんですがヤタさんという方も妖怪?の方でしょうか?」


「ええそうよ、ヤタちゃんは有名だから名前を聞いたらわかるかしら?八咫烏のヤタちゃんよ、ちなみにこちらでは八咫烏運輸という会社で成功していて引っ越しは烏天狗の子達が鴉引っ越しセンターって名前でやっているわ」


八咫烏その名前は俺でも知ってるくらいの有名な妖怪の名前だ、この世の中は俺が知らないだけで妖怪とかたくさんいるのかもしれない。

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