修羅場カラオケ編
scene5 : カラオケに行きたい女の子 ☆
◇
最初は3組のメンバーでカラオケに行くって話だった。
それからその話を聞いた4組の人も一緒に行こうよってなって、なんだかんだあって、最終的には何故か8組の人まで混ざることになって…もう、何人いるの? ってぐらいの人数になってるみたい。
少なくとも二十人は超えてるっぽいけど…パーティー用の部屋なら、この人数でも入るらしい。そんなデカい部屋あるんだね。
日曜日になって、カラオケに向かってる途中のこと。
信号待ちをしていると、大きな車道を挟んで向こう側に、おろおろしている女の子が見えた。
たぶん小学校高学年ぐらいで、そのぐらいの子にしたら上品で落ち着いた身なりをしてる。しっかりした家庭で育ってそうな子だった。
そんな子が、分かりやすく困ってそうな振る舞いをしている。
「あっ…!」
信号が青になって、その子との距離が縮まっていく途中、その子は俺を見てハッとする。それで、こっちが信号を渡り切るや否や駆け寄ってきた。
「どうしたの?」
「あ、あの! 道がわからなくて…」
やっぱり迷子か…
この辺りの子じゃないのかな?
「一人?」
「あ、うん…」
マジか? 危なくね…?
遭遇できて良かった。
とりあえず…交番に連れて行ってあげればいいかな?
道端で迷子の子なんて初めてだからちょっと焦っちゃうな…
そう思ってると、
「今からカラオケ行きますか?」
いきなりそんなことを聞いてきた。
「えっ!? 何で分かったの?」
「え、行きそうだと思って…」
なにそれ洞察力? …凄すぎない?
大人なのか子供なのか分からないようなその子は、こっちを見上げながら、心細そうに…
「ついて行っていい?」
って、そう言った。
でも俺が言うことに詰まった瞬間、顔を曇らせて下を向いてしまう。
カラオケ方面に目的地があるのなら、とりあえずそこまでは連れて行ってみよっか…?
そこに誰かが待ってたりしたらそれでいいし、まだ迷子のままならもう少し面倒みてあげても全然良いし。
俺は心細そうに俯いてしまった女の子を安心させようと、手を繋ぐ。
「いいよ! 行こっか」
「えっ!? へっ!?」
「はぐれないようにね。こうしてると迷子にならないでしょ?」
「は、はぁ……」
横に並んで歩き始めたときに、この子の鞄についてるストラップが目に入った。
「その作品好きなの?」
偶然知ってるキャラクターで良かった。一緒に盛り上がれる話として100点の話題じゃん?
「推し…」
「推し…その人かっこいいよね〜! 俺も好き〜」
小学生の子も推しって言うんだ…
アニメで見てるのかな…?漫画?
このくらいの歳で、もう中高生向けの漫画楽しめるってだけで、頭良いよな〜。俺もそのくらいのときに普通の少年漫画読んでみたことあったけど、あんまり分からなかったもん。
この子はやっぱ、一歩大人びてる子っぽい?
駅から徒歩で来れるぐらいの距離だし、そんなに時間も経たない内にカラオケが見えてくる。
「ん…」
「……?」
この子にもカラオケの看板が見えたみたいで、看板に気づいた途端、繋いでた手を解こうとしてくる。
もうすぐ知り合いの人がいるのかな?
大人の人がいれば良いんだけど…
「ここまでで…ホントに大丈夫? 向かってるところまでついてくよ?」
「ここです」
「え?」
「みっきー!……と… ペケさん??? なんで?……二人って知り合い系???」
「えっ…井浦さんっ?! めっちゃ偶然じゃん!!」
カラオケの駐輪場には、クラブのメンバーの井浦さんがいた。
前に秘密基地で会った時と同じ三つ編みで、今日はキャップを被っててスポーティーだった。
「
「あ!! おーーっ! すぐ行く! 先に入ってて! 」
カラオケの入口の前にはクラスの人達が結構いて、大所帯だしこのままじゃ迷惑になるからって感じで、人が集まりきる前に、とりあえず中に入ることにしたみたい。
「井浦さん…たち? もカラオケ?」
「カラオケー♪」
「って、井浦さんだったんだね? この子が探してたのって。来る途中で会ってさ…カラオケまで案内してたとこ」
「えーー? 道分かんなかった? みっきー。電話してくれればよかったのに?」
「充電切れてた……」
「あー」
「えーーっと……………二人って、どういう……関係?」
「
「うん」
「へっっ?!………えっ…?!」
「
「ぁっ!?………は〜〜…、そっ……か…。よろしく〜」
まさか中三だとは思わなかった…っていうのは、なんとか口に出さずに留まれた。
失礼だろうなって思って…
中三か……
中三……ね……
いや手遅れ感ヤバいな…
幼い子だと思ってたことバレてるよねこれ...
「……ごめん、子供みたいな扱いしちゃって…」
「いいです…最近よく子供っぽいって言われるから…」
「ペケさん正直者〜! 」
「いや……は〜〜…そっ……かぁ………ごめんね…」
「いいけど…でも…」
「鈴木先輩、私のこと、何歳だと思ってたの?」
「えっ…?」
ん?
……いや、これはさすがに正直に答えるのは…
やば…なんて答えよう…?
いや〜〜……あー…
「中学……一年…ぐらいかな〜?」
「ホント…?」
「………………う………」
「うわ! ペケさん嘘ついた!」
「ふふっ…ふふふっ……先輩ウソ下手だ…!」
「ねーー。ペケさん、本当は? 」
「ごめん…勘弁して…?」
小学生は流石に言えないよ…
あ〜〜〜……ミスった…見た目で判断しすぎたなぁ…
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