第3話 …… Mission『最高にドラマチックなスカウトの演出!!』(前編)
scene1 : 休み時間
◇
ウチの学校の生徒数は、三学年全員合わせて多分800人ぐらい。
そのそれぞれの人の才能に注目して見たことなんかなくて、意識してみると、やけに一人一人が際立って見えてくるものだった。
「さて…どうやって探すか、だよね…」
今進行中の活動のおさらい。
先輩が所属してる事務所が、タレントとして素質の有る人を探してるらしい。その才能探しの協力をする、っていうのが今回の活動の中心だ。
今求められてる職種は四種類で、俳優と配信者、アイドル、あと一応歌手…なんだけど、歌手は探す対象から捨ててもいいらしい。もしよっぽど特別な人がいたら、その時だけはスカウトして、って話になってる。
「歌手なら…一緒にカラオケに行くとか? アイドルなら
こればっかりはどう探せばいいか検討もつかない。
ただ、俳優の素質がある人って考えた時、当然一番最初に思い浮かぶ人がいたわけだけど…
「そういうのは興味ないから」
当の朝園はそんな風にさらっと
休み時間、エナジードリンクみたいな味の炭酸のやつを買いに自販機まで来たところで、ばったり朝園と出会った。
友達グループから一旦離れて、ここに飲み物を買いに寄ったらしい。
同じクラブの一員になって、共通の話題ができて、話しかけやすくなって…なにより朝園が、前よりも少し冷たくなった気がする。そういうのが…むずむずして、ニヤけそうになるほど嬉しい(冷たいこと自体が嬉しいんじゃなくて…)。
今回の話の流れで、例えば朝園は俳優とか興味ないの? って聞いてみたんだけど…きっぱり、無いという。
「そっか……そうだよなぁ…。もし天職だったとしても、本人がやりたいとは限らないんだよね…」
それって結構難しい問題だよね…。
それに有名な人が皆、幸せそうかっていうと…ね。
だから尚更、本人の意思なく無責任に勧めることはできない。
才能とか努力とか…それで駆け上がっても、幸せになれないかもしれないって…勿体ない世の中だわ。
それにしても朝園って…
「素質だらけだよなぁ…綺麗だし、華あるし…………………演技うまいし……」
「ん? どういうこと?」
「すいません」
「ちがう。どういうこと? って聞いてるよ?」
「あ、や…」
「 猫かぶるのが上手ってこと?」
「いや、そこまでは…」
「あ〜あ、ひどいこと言われちゃったな〜。ペケくんのことキライになっちゃった」
「へっ!! ごめん!!」
「はぁ…つら…」
「いやっ今のは…!」
「友達が待ってるっ、じゃあね」
朝園はそう言って自販機近くの陰から出ていく。
そして友達と合流した時にはもう、一瞬前の事が夢だったかのように、完璧に落ち着いて微笑んでいた。
別に泣きそうになってない。
別に朝園も冗談で言ってるだけで本気じゃないし気にしてないから、つらいとかじゃないけど、一応涙はちょっと出てるけど。
◇
「なあ…配信者に向いてる人ってどんな人だと思う?」
今度はクラスの友達に聞いてみることにした。
一人でどうにもならないなら、皆に聞いてみるのがいいっていうし。
「流星、配信者目指してんの? アカウントなに? フォローするべ」
「いや…」
そしたら後ろの人達が聞いてたみたいで、その話に食いついてきた。
「え? 鈴木くん配信してんの? なんて名前?」
「マ? 鈴木配信してんの? アカウント教えなよ」
「えーどんな? 何系?」
「やるじゃん鈴木くん」
「フォローするけど?」
「いやしてないしてない! 配信とかしたこともないから! びっくりした〜! そういう話じゃないって!」
「え〜〜?」
こっわ! こうやってバズるの…? いやどっちかっていうと炎上…? 発言には気をつけようマジで。
さっき朝園相手にも炎上しかけた感あるし…。
「え〜」
「なんだ違うのか〜つまんな〜」
「もう始めちゃえば?」
「適当過ぎない?」
「ファッション系とかやりな〜」
「いやいや…」
他人事だと思ってこの人ら…
集まった女子
「じゃなくてさ、配信者に向いてる人って、どんな人だと思う? って話! 俺じゃなくて!」
「あ〜〜〜、ね。 それは喋りが上手い人っしょ」
「イケメンだったら推せるけど」
「でも、顔出し無くてもいけるじゃん? バーチャルでも」
「確かに…」
「ん〜じゃあ、面白くて独特な人?」
「……面白くて独特な人……」
面白くて独特な人……ね…。
居るじゃん?
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