scene5 : 家庭科室


「はぁ〜………………二人とも、知り合いだったのかよ……」


俺達三人は空きっぱなしの家庭科室に戻ってきて、椅子を3脚持ち寄って話していた。


「めっちゃ仲ええで。知り合いどころやないわ」


完全に弄ばれてたってわけだ…。

マジでもう頭ん中めちゃくちゃだよ…。


「ぷっ」


茜はまた、さっきから何度も繰り返してるように、急に吹き出した。


「くく…! はっはっは! あかん! 思い出してもうたおもろすぎる!」


俺は…なんで自分がここに居るのかもよく分からないし、もはや何も考えたくない…。


「ガチで足滑らせて…璃々の………迫真のきゃあああっ!! あーははは! ツボった!! あかん! ははは!! ずっとおもろい!!」


「あかね! はやく治まれ! もう!」

「はは…………ふぅ……………………」


「ぷっ」

「ん゛ん゛っ…」


俺…どんな気持ちで居ればいい? 好きな人にフられて…その好きな人がまだ前にいて、一緒に会話してる意味不明な状況でさ…。


「それで、どうかな? さっきの話…」

「色々あったけど、なんだかんだ楽しかったやろ?」


朝園と茜がそう言ってくる。

茜こいつ……楽しかったってなぁ…


「はぁ…もう何言われても何も感じない…」

「ごめんて!」

「あはは…ごめんね?」


それは…ずるいじゃん…。朝園に言われたら許しちゃうって………


「そのってのは、さっきみたいな事やっとんねん」

「…人を弄ぶ感じのことか…?」

「そこちゃうって! もう半分の方や!」


「自分が告白した時、いい感じにすごかったやろ?」

「ああ…提案してくれたやつね…スゴカッタネ」


「ああいうのみたいに! いろんな事を、陰から、表から、ドラマチックに演出する!っちゅークラブや!」



「百聞は一見に如かず、言うやろ? やからまずは体験してもらったわけや」

「はあ…」


「あ、ちなみにやな、ジブンの演出のやつ、ウチはちゃんと考えてやったで? はじめからフラレる前提ってわけやなかったから」


「 ジブンは、ちゃんと告って、ちゃんとフラレたから。それはウソやないで」


「ぁ〜〜〜……!そこはウソであってほしかった… 何でそんな…追い打ちかける事言うの?…優しくしてくれよ…」


「いや…あれもこれも、普通に引きずるよりはエエかな〜思って………で、どう?」


「そのクラブに、ジブンも入らへん? って勧誘やねんけど…」


そんなクラブ入るわけ…


「どうかな?」

「ん…ん〜………」


朝園もいるんだよなぁ……あぁ〜〜もうくそ……入りたい…………っ。

あ〜〜、もうなんなんだよそのクラブ!

なんで朝園がそんなとこにいんの…?

も〜〜、頭と心がしんどい…


「…………は……」

「ん!?………今、入るって言うた?」


「ぅぅ〜〜…いや…まぁ……ぁ〜…言ったよ…! 入る! 入るよ…!」

「ホンマかっ!! やった! 璃々!」

「うん、よかったね、茜」


そんなに新しいメンバーが欲しかったのかな? 俺が入るのでそんなに喜んでもらえるならまぁ…良かった…。

初めは最悪な印象だったけど、仲良くは、やれそうなのかな…


「よろしくな! ペケ!!」

「あ、ん………」


「…………ん?」

「…?」


「………『ペケ』って……俺のこと?」

「おん! 」


「………?? …初めてそんな呼ばれ方したんだけど……名前と全く被ってない……よね? 俺の名前、鈴木流星っていうんだけど…?」



「そんなん知っとるわ! 璃々に告って、フられたから! 自分のあだ名! ペケ( ✗ )な!」

「は………っ?!」

「あ、呼びやすいかも。よろしくね、ペケ君?」


「いやっ…は……ん゛〜〜っ!!」



ひとつ……分かったことがある。


朝園にこんな感じで話してもらえるのは正直めっちゃ嬉しいし、

なんならまるで思い描いてた夢が叶ったみたいで、感動もしてる。

朝園に言われると、色々全部受け入れかけてる自分がいる…。


ただ、茜については言うまでもないし……

この茜と一緒にいて、めちゃくちゃ気が合ってる朝園も……ね…


こいつらは、たちが悪い……!




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