第11話
「私、お母さんがいるそっちの世界に行く。それでお母さんの悲しみや苦しみが少しでも軽くなるなら。その代わり真侑さんとおじさんには危害を加えないで。それとお父さんとあの人といるかいないか分からないけど妹と弟も………お願いだからもう止めて」
声を曇らせ、両手を伸ばして赤い服を着たくるみ割り人形をぎゅっと抱き締めた。
「赤い服のくるみ割り人形さん、たった一人で真っ暗な世界にいて寂しかったよね。これからは私もキキもララもくるみも、きみのそばにいる。だからもう寂しくないよ。きみはもう一人じゃないよ」
それまで熱り立っていたくるみ割り人形の表情が少しだけ和らいだようなそんな気がした。そのとき「懺悔懺悔 六根清浄 お注連に八大 金剛童子」と唱える不気味な声がどこからか聞こえてきて、シャランシャランと怪しい鈴の音が聞こえてきた。
「え?何?聞いちゃ駄目って、なんで?」
意味がよく分からなかったけど、
「真侑さん、おじさん、耳をふさいで。鈴の音を聞いちゃ駄目だって。あの世に連れて行かれるって」
言われた通り耳を手で塞いだ。目に見えぬ恐怖に怯えながらただひたすら時間が過ぎるのを待った。
くるみ割り人形の顔を見ると、光芒を放つ目で私をじっと見つめていた。何かを訴え掛けているようなそんな目だった。
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