第5話
「ちこちゃん、おじさんたちの子どもにならないか?」
「……」
一瞬、何を言われているか分からなくて。
きょとんとしてしまった。
「私、ここにいても……いいの?」
「何を言っているの。当たり前でしょう」
「私、てっきり真侑さんと孝おじさんにいらないって言われると思っていたから、施設に預けられると思っていたから、だから、その……」
「いらないって言う訳がないでしょう。ちこちゃんは私の大事な姪だもの」
母が突然失踪して七年。
真侑さんは母の死亡届を役所に出して、私を養女として迎えることに決めたと話してくれた。
「母は亡くなる前に、家庭裁判所にちこちゃんの親権をこっちに渡すように申立てをしていたのよ。あの男、ちこちゃんを追い出しておきながら、住民票はそのまま。本当は提出しなければならない転出届と受給事由消滅届を役所に出していないから、児童手当や臨時給付金はぜんぶあの男のところに振り込まれている。子どもがいるから生活が苦しいからと母にはびた一文渡そうとしなかった。勝手すぎるわ。母だって年金暮らしで生活が苦しいのにちこちゃんを懸命に育てていたのに」
「さすがは弁護士さんだ。悪知恵には長けている。法律は弱いものを守るためにあるんじゃないのか?」
おじさんが悔しそうに歯を噛み締めた。
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