婆様の話など
朝野五次
第1話
あれミネはもう手っこ冷だくなってるでねか
ばっちゃがあっためでける
背中も火であぶればあったけえど
ヒデも、もう夜も遅いで走り回んでねえ
ばっちゃの隣に来てけろ、そうだ良い子だな
まだ眠くねえが
また話、しでやるか
だけんどな、まず背中あっためろ
背中に火でも点いたみでえにあっづくなっだらな
そごで布団に入るんだ
よしよし、皆、布団サ入ったな
むかし、むかしの話でな
あるところにじっちゃとばっちゃが住んでおったと
ある日な、じっちゃが茅葺の屋根を直してたらな
うっかりして便所に落ちたんだと
どぼーんだ
屋根にはぽかーんとでっけえ穴っこ開いてたと
じっちゃはあんまりぷんぷんと臭えから
ばっちゃに家からたたき出されたくれえだ
風呂ついでにカヤでも刈ってくるってじっちゃが言ったらな
そんならこれでも持ってけ腹減ったらいけねとばっちゃが握り飯くれたと
家からオン出されたじっちゃな
まずは行水でもすべってな川さ行ったと
着物まできれいに洗って、元通りになったところで
川の上流の方からひょろひょろした
山伏みでえなのが歩いてきたと
それが青白っくてな
何日も飯食ってねえんだなと可哀そうに思ったじっちゃな
そのひょろひょろしたのに握り飯やっだんだと
その山伏がな
あんがとさんで喜んでな
お礼にじっちゃに変な呪文を教えたと
早く唱えたら走るのが遅くなってな
遅くゆっくり唱えたら走るのが早くなるってさ
ぬるならなりぬるぼーうぼう
試してみっが?
まだいいって?
そこからな、じっちゃは山さ行ったと
山ん中かぎわけで、深いとこの獣道行ったらな
向こう側から
ずらずらのったり何かがやってぎたど
見上げでみるとな、家の屋根よりずっとたけえ丈の
でっけえ蛇だったと
それがぐわあっと家の戸よりでっけえ口開けてな
舌がちろりちろり出してどうやってじっちゃを飲み込むか
考えてる様子だったと
じっちゃ、たまげてな
走ろうとするけんどな
あんまりたまげすぎて足に力が入らんのよ
だからな、みんなでじっちゃば助げてやれ
ぬるならなりぬるぼーうぼうってな
そしたらじっちゃが走って逃げられるだろ
ほれそんな早がったら蛇がじっちゃに追いついちまうぞ
あらうまいごと
そんだ、ゆっくりとなえてけ
やっとのことで大蛇から逃げたじっちゃはな・・
あれもう寝たか
続きはまた明日な
婆様の話など 朝野五次 @Feb2024
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます