第63話063「櫻子の告白(1)」
ブオンっ!
「うぉぉっ!? い、今のはかなり危なかった⋯⋯。ただのジョークじゃないかよぉ!」
「⋯⋯お主。今の話の流れでよくそんなジョーク飛ばせたな?」
「いや、ほら、ちょっと暗い話になったなぁ〜と思って。だから場を明るくしようと⋯⋯」
「そんなのしなくていいわい!」
あ、マジで『おこ』のやつだ。
「ごめんなさい」
「フン!」
——閑話休題
「じゃあ、今度は逆に櫻子ちゃんのことを聞きたいんだけど?」
「ワシか? 別にいいぞ。何が聞きたい?」
「聞きたいことは色々あるけど、一番は櫻子ちゃんがどうやってこの現代にやってきたのかってことかな」
「ふむ。まぁ、そうじゃろうな」
そう言って、櫻子ちゃんは俺がさっき入れたコーヒーを一度口にしてから話し始めた。
「ワシがこの世界に来たのは今から約20年前——つまり、ダンジョンがこの世界に出現したタイミングでここにやってきたのじゃ」
「え? えええええっ?!」
のっけからすごい話が飛び出した。
********************
「今から20年前——ワシはエルフ族の暮らす里『セディナ』で族長として就任したばかりじゃったが、突如『空間の
「空間の⋯⋯歪み? それって⋯⋯」
「お主も
「あ、ああ。まぁ⋯⋯」
『空間の
俺が異世界にいた頃、頻度は少ないものの、突如、空間が裂けてそこに引き摺り込まれるという事件があった。しかも不思議なことにその『空間の歪み』に引き摺り込まれる対象は、必ず『知能を持った生物』⋯⋯より具体的に言えば、人間族・獣人族・エルフ族⋯⋯魔族も含め『知性を持った生物』だけが引き摺り込まれるという特徴があった。
そのため、『空間の歪み事件』は種族を越えて、すべての者から恐れられていたのだ。
ちなみに、この『空間の
「そういえば、たしか俺が魔王討伐で『セディナ』に立ち寄った時、族長から前の族長が空間の
あれ? でも、その時に族長から前の族長の名前を聞いたけど『櫻子』なんて名前じゃなかったような⋯⋯?
「ああ⋯⋯もしかして『櫻子』って名前に聞き覚えがないということで首を
「え? あ、うん⋯⋯」
いや、櫻子ちゃん、勘いいな。ていうか、察し良すぎな件。
「そりゃ、こっちに来て名前を変えたからじゃよ。元の名前は『サクラコルン』という名前じゃったぞ」
「ああ、そうだ! 思い出した! そうそう、俺も当時エルフ族の族長からその名前聞いた時に『桜(サクラ)』って入っているから妙に親近感沸いたんだよな〜」
「ほう、なるほどのぉ。ちなみに、ワシがここに来て最初に出会った者たちがのちに一緒にダンジョン探索をするクランメンバーになるんじゃが、そのクランメンバーの一人がワシの名前を聞いたら『じゃあ櫻子に改名しなよ!』と言われてな。それでこの名前になったんじゃよ」
「へ〜そうなんだ」
そうか〜。櫻子ちゃんの名付け親は元クランメンバーなんだな〜。
いや、良い名前を付けてくれたよ。元クランメンバーの名付け親、グッジョブ!
「⋯⋯話を戻すぞ。で、その『空間の
「い、池袋ダンジョンっ!? それって、あの『
「そうじゃ。ちなみに『池袋ダンジョン』はこの世界で初めてダンジョンが出現した場所でもある」
「ええっ?! せ、世界で初めてダンジョンが出現した場所が⋯⋯池袋ダンジョン?!」
マジか⋯⋯。
「まー、世間的には『池袋ダンジョン』が世界で初めてダンジョンが出現した場所とは認められていないがの」
「は? どゆこと?」
「イニシアティブを取りたい⋯⋯いや、そんな大層なものでもないな。『ダンジョン発祥の地はウチですよ』ということにめちゃめちゃこだわりを持つ面倒臭い連中がおってな」
「ダンジョン発祥の地への⋯⋯こだわり⋯⋯?」
「うむ。で、そいつらの行動指針がまたいろいろでな。ただのしょうもない個人のわがままだけの奴もいれば、行き過ぎた愛国主義者だとか、ダンジョンを神格化させダンジョン至上主義を謳っている信者だとか⋯⋯そんな頭のおかしい連中ばかりなんじゃよ」
「は、はぁ⋯⋯」
「当然、因縁の付け方も面倒臭いぞ? 国際法を『盾』に理不尽な要求を言ってくるやり方じゃったり、暗殺者を送り込んで物理的に命を獲りにくるやり方だったり⋯⋯そんなんばっかじゃ」
うわぁ、面倒くさそう〜。
これは絶対に関わりたくないや〜つ。
「まーワシには理解できんがそういう輩がこの世界にはなぜかいっぱいおるようでな。ここへ来た当初、ワシはクランメンバーとダンジョン探索をしながらこの世界のダンジョンを研究しておったのじゃが⋯⋯」
「ダンジョンの研究? 何を研究してたんだ?」
「まーその辺の話はのちほど話す。で、話の続きじゃが、ワシはその研究成果を一度世界に向けて『池袋ダンジョンがこの世界で最初に出現したダンジョンである』と発表したんじゃが、その時にいくつかの国から因縁をつけられての」
「
「うむ。その国についても後から話す」
もう! もったいぶっちゃって!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます