第36話036「雨宮バリューテクノロジー『開発室』にて〜如月 柑奈〜(1)」
——土曜日
「悪いね、ここまで来てもらって。お嬢」
「こんにちは、柑奈さん。いいえ、全然大丈夫です」
私は今日炎上したDストリーマーオメガの配信終了後、すぐに父の会社の中にある『開発室』の柑奈さんに映像解析の依頼を出した。
柑奈さん⋯⋯『
ちなみに、この『開発室』は電子通貨決済サービスの根幹となるテクノロジー『AMAMIYAシステム』を開発した場所でもあるのだが、そんな雨宮バリューテクノロジーでも最重要施設と位置付けられている『開発室』の室長を弱冠23歳の柑奈さんが務めている⋯⋯といえば、柑奈さんがどれだけ凄いかがわかるだろう。俗にいう『天才』というやつだ。
そして、そんな柑奈さんは私にとって『きれいでかっこいいお姉さん』で憧れでもある。
もちろん、天才性も柑奈さんの魅力の一つではあるが、それ以上に女性としてかっこいい柑奈さんが私は好きだ。
そんな柑奈さんにDストリーマーオメガの配信映像を分析してもらったところ、「ちょっとこっちに来てくれる?」とスマホにメッセージが届いたのですぐに開発室へと足を運んだ。
ちなみに、私たち家族は自社ビルの最上階で暮らしているので開発室は目と鼻の先だ。
********************
「ところで、どうでしたか。解析の方は?」
「うん。この配信映像がCGではないこと。リアルの配信映像であることは100%解析できたよ」
「そうですか!」
私は、柑奈さんの言葉を聞いて素直に喜ぶ。そんな私の反応を見て柑奈さんが「おお!」と驚いた表情を見せると、
「いつも他人にほとんど関心のないクールなお嬢にしては、だいぶ派手なリアクションだね。そんなに嬉しいのかい?」
「はい! だって、私の憧れの対象ですから!」
そう、私はDストリーマーオメガの配信を観て以来、彼の『圧倒的な強さ』に憧れを抱いていた。
「なるほど。まーでもあの強さははっきりいって異常だ。『規格外』⋯⋯という言葉でさえ生温く感じるほどにね」
「⋯⋯たしかに」
おそらく、柑奈さんは
「
「え?」
「⋯⋯私はねお嬢、自分でも天才という自負はあるんだ。だけどね、そんな私でも、彼に関してだけは知識を総動員しても全く答えが出てこないんだよ。全く⋯⋯全然⋯⋯だよ? こんなの初めてだ。ハハハ、最高だよ、彼」
「か、柑奈さん?」
柑奈さんの
以前、柑奈さんにスイッチが入ったのは私の知る限りでは2年前。その時の対象は『
最初は、根掘り葉掘り質問され、ベタベタと体を触ったりするので気持ち悪がっていたが、しかし、徐々に打ち解けていくうちに柑奈さんの女性としてのカッコよさに気づき、それから憧れるようになり今では『本当の姉妹』のように仲良くなった。
しかし、柑奈さんに憧れるようになったこんな私でも、この『柑奈スイッチ』が入った時の柑奈さんの異常性は少し狂気を感じて怖い。⋯⋯ということを前に柑奈さんに打ち明けたら、
「あら? それを言ったらお嬢も私に負けないくらいの異常性あるじゃない?」
と言われた。私は柑奈さんのその言葉にまったく理解できなかったので、
「私にはそんなのありません!」
と強く否定。すると、
「フフ、そう? まぁ、でもいつか、そんなお嬢の異常性が出るほどの
と返された。それは正直今でも意味がわからない。
ま、とりあえず今は柑奈さんの『柑奈スイッチ』が入ったという話だ。
「それにしても、このオメガ君の見た目⋯⋯。20⋯⋯いや10代? 少なくとも私の脳内サーバー上で解析したところ10代である可能性が非常に高いわ」
「えっ?! 10代⋯⋯ですか?」
そんな⋯⋯まさか! でも、柑奈さんの脳内サーバーによる解析はほぼ的中する。
10代⋯⋯大学生か、高校生?
そんな時、私の中でふと
「タケル君?」
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