第35話035「疑惑」
俺が異世界転移のきっかけとなったあの交通事故で救った美少女⋯⋯雨宮 理恵こと理恵たんは、何とあの『雨宮バリューテクノロジー』のCEOの娘だった。
俺も詳しくは知らないがそれでも一つ確実に知っているのは、現在のすべての電子通貨決済サービスの根幹である『AMAMIYAシステム』を生み出した会社ということ。あと、日本で唯一世界の巨大企業とも対等に肩を並べるレベルの世界的巨大企業の一つということだ。
「マ、マジすか?」
「は、はい。マジです」
おいおいおい、これってちょっとしたお金持ちどころじゃないじゃん。
「で、話を戻しますと、父の会社の『開発室』でそのDストリーマーオメガの配信映像を分析してもらったんです。そして、それで確認したところ、あの映像は100%リアルの配信映像だということがわかりました」
「な、なるほど⋯⋯」
そりゃ、あの『AMAMIYAシステム』を生み出した巨大企業の技術者の出した答えなら間違いないだろうな。
「だから、佐川は理恵たんの言っていることをすぐに信じたわけか」
「そうだ」
まー、そりゃ信じるわな。理恵たんの背景知ってたら。
「タケル君⋯⋯」
「うっ!?」
突然、理恵たんが俺にスッと近づいて耳元に手を当ててきた。
(す、すみません、突然。でも一つ聞きたいことがありまして⋯⋯。あまり大きな声で話す内容ではないのでこういう形で聞くことになるのですが⋯⋯構わないでしょうか?)
「も、もちのろんさ!(激しく動揺)」
(あ、あの、タケル君って最近⋯⋯F級
「えっ?!」
なっ?! 理恵たんが何でそのことを!
(ご、ごめんなさい?!
「知り合い? もしかして
(ま、まあ、そんなところです。それで、こんなこと周囲の生徒に知られると迷惑かなと思ったので、それでこうやってお伝えしました。すみません)
そう言うと、また元の位置に戻った理恵たんはペコリと頭を下げた。
俺は一瞬ごまかそうかと思ったが、たぶん理恵たんにはそんなごまかしは通用しないだろうと思い、素直に最近F級
「やっぱり、その話は本当だったんですね。嬉しいです!」
「嬉しい?」
「はい。だって、
ニコッと満面の笑みでそんなことを言う理恵たん。あらかわ。
「そう言ってくれるのは嬉しいけど、でも、理恵たんとは全然階級違うから。それに登録したのは一昨日の土曜日だったし⋯⋯」
「一昨日の⋯⋯土曜日?」
「うん。だから自分なんてまだ
俺は無難に笑ってごまかそうとした。しかし、
「だ、大丈夫です! 足手まといなんてとんでもない! それに私がいればタケル君のレベル上げもしやすくなりますよ! どうですか?!」
ぐいぐい来る、理恵たん。
「じゃ、じゃあ、今度、お願いもしていいかな?」
「は、はい!」
その時、ちょうど担任の風香先生が教室に入ってきたため、そのタイミングで理恵たんは立ち上がり、
「タケル君、今度じっくりと
と、またもや爆弾を投下して去っていった。すると当然、
「「「「「タケル
「⋯⋯はい」
そうして、ホームルームが終わった直後、1時限目が始まる直前まで俺は雨宮親衛隊の執拗な尋問を受け続けたのは言うまでもない。
********************
「ほ、本当に、タケル君がF級
——お昼休み
私は、いつものように屋上で一人お昼を食べていた。
屋上はいつも鍵がかかって入れないのだが、私は父に
もちろん、こんなこと普通はやってはいけないことだ。でも、私はずっと学校がつまらなかったし、友達も作ろうとも思わなかった。だって、本当はすぐにでも
私は両親に自分が
これで私は両親に
だから、私は「せめて⋯⋯」と譲歩案として『私専用の屋上の鍵』をお願いした。
最初は、ワンチャン「そんなワガママ言うのなら学校やめて
まさか父がそんな簡単に私のわがままを聞いてくれるとは思っていなかったので、『わがまま作戦』は失敗したが、しかし学校ではどこにいても「雨宮の娘」や「D級
そんな屋上で一人ご飯を食べながら私は『ある疑問』に朝から⋯⋯いえ、具体的には今朝タケル君と話した後から心は大きく揺さぶられていた。
それは土曜日、父の会社の開発室で配信映像を解析中にわかった『Dストリーマーオメガの情報』のことで、それは、その時
「ほ、本当に、あのDストリーマーオメガはタケル君⋯⋯なの?」
『Dストリーマーオメガと結城タケルは同一人物』という疑惑だった。
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