第34話034「理恵たん」
そういうと、雨宮さんの体から魔力がブワッと膨れ上がった。
「ちょ?! ストップ、ストーップ! あ、雨宮さん、そんな魔力こめた攻撃加えたら佐川も校舎も持たないから!?」
俺は二人の間に入り、雨宮さんに全力で魔力を抑えるよう訴える。ていうか、雨宮さん今平気で魔力膨らませて佐川にぶっ放そうとしたんですけど? この人、ちょっと危なくね?
そんな、俺が引いていると、
「あ、あの、誤解しないでくださいね、タケル君?! 私、普通の人にはこんなことしませんから! ただ、佐川はタケル君をいじめてたって聞いていたので、だからこんなクズはウチの研究施設で
うんうん、人格崩壊ってもっとドン引きしちゃったよ、雨宮さん。
この人、見た目は可憐な美少女であることは間違いないけど、でも、どこかマトモじゃないのも間違いない。となると、ここで俺がフォローを入れないと、雨宮さんはいずれ佐川をマジで拉致するのもまた間違いないだろう。
「あ、雨宮さん、実はね⋯⋯」
といって、俺は雨宮さんに佐川と今は仲直りをしたという話をした。
「え? そうなんですか?」
「うん。今は佐川は友達だから。だから、その研究施設に連れて行くっていうのは無しの方向でお願いします」
「ま、まあ、タケル君がそこまで言うのなら⋯⋯」
とりあえず、雨宮さんは納得したようだ。⋯⋯ホッ。
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「そういえば、さっき廊下から二人が『オメガ』というDストリーマーの話をしていたのを聞いたのですが⋯⋯」
「あ、うん」
「雨宮はどう思う? あのオメガのこと?」
佐川が雨宮さんにそう質問をすると、
「まー、正直何とも言えない⋯⋯というのが本音ですね。あの尋常じゃないスピード、そしてそこから繰り出される体術、あとはあの一撃で魔物を破裂させるという非常識なまでの攻撃力⋯⋯。私の常識とはあまりにかけ離れているので」
「ていうか、雨宮の常識も大概だけどな?」
「は? それって喧嘩売ってます? 佐川の分際で?」
「言い方っ!?」
「タケル君に止められたのでとりあえず処分は保留にしていますが、私の中であなたがタケル君へ行った『
「お、おい、誤解すんなよ! 俺はただ、高校生ですでにD級
佐川が必死に雨宮さんに弁明する。よっぽどさっきの雨宮さんの脅しが効いているようだ。
「そ、そうですか、それは失礼しました。⋯⋯コホン」
佐川の言葉を聞いて雨宮さんは自分の勘違いに気づいたのか、顔を紅潮させ謝る。
あれだけ嫌っている佐川に対して謝れる雨宮さんは、キレたら何をするかわからない狂気じみた部分はあるものの、基本『人格者』なんだろうなとこのやり取りで感じ取れた。
「あ! あと、あのオメガの配信映像ですがあれはCGではありません。100%リアル配信映像です」
「やっぱ、そうだよな!」
「え? ちょ、ちょっと待って!? どうして、雨宮さんは断言できるの? あと、佐川も何で雨宮さんの言葉をすぐに信じてんの?」
「⋯⋯理恵です」
「え?」
「タケル君。私のことは『理恵』と呼んでください」
ざわっ⋯⋯。
その瞬間——また、いつぞやのように教室の空気が揺らいだ。ていうか『雨宮親衛隊』の殺気だな。とはいえ、美少女から名前呼びを求められ、それを拒否するなどそんな日和ったラノベ主人公と俺は⋯⋯違う!
「わかったよ。理恵
「いや、名前呼びどころか『たん』って! 距離感おかしいだろっ?!」
と、佐川が横でツッコミ、
ざわ⋯⋯ざわざわざっわ〜!!!!
と、教室の殺気が『希望の船エスポワール号船内』ばりにざわわ上昇していく。しかし、
「⋯⋯(ポッ!)」
っ!!!!!!!!!!!!!!!!!
理恵たんがさっき以上に朱色に染まった頬に手をあてる。そして、その光景に佐川と周囲の⋯⋯ていうか雨宮親衛隊たちが絶句する。
フフフ、勝った。
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「うおっほん! と、とりあえず、話戻すぞ。タケルが何で『オメガの映像はCGじゃなく100%リアル映像だ』と言う雨宮の言葉を俺がすぐに信じたのかって話だが、それは雨宮の両親の仕事に関係するんだ」
「え? 理恵たんの両親?」
「理恵たん⋯⋯うっ! こ、ここからは、私が、せ、説明、致します⋯⋯」
理恵たんがまた顔を赤くしてドギマギする。
なるほど、どうやら彼女はまだ俺の『理恵たん』呼びに慣れていないようだ。こういう理恵たんの仕草もかわいい。
まったく美少女のドギマギシチュは最高だな。優勝だな。
「え、え〜と⋯⋯私の父は会社を経営してまして」
「会社?」
へ〜、ということはお父さんは社長さんってことか。理恵たんのあの所作からしてやっぱ好いとこのお嬢様だったか。
「⋯⋯『雨宮バリューテクノロジー』ってご存知ですか?」
「はぁっ!? あ、雨宮バリューテクノロジーぃぃ!!!! それって、
「は、はい。私の父はその『AMAMIYAシステム』という電子通貨決済サービスの基礎技術を手がけた雨宮バリューテクノロジーのCEOです」
ぱーく、ぱーく、ぱーく。
俺の空いた口は塞がらないどころか、壊れたおもちゃのようにパクパクしていた。
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