第27話027「Dストリーマー登録」



——受付


「あの、すみません。これからダンジョンに入りたいのですが⋯⋯」


 俺は早速葛西さんに教えてもらったダンジョン入場の受付をしにやってきた。


「かしこまりました。では、登録証をお願いします」

「はい」


 俺はさっき授与されたF級探索者シーカー登録証を渡す。


「えーと、結城タケル様ですね。本日F級になられた⋯⋯おめでとうございます」

「⋯⋯! あ、ありがとうございます」


 こういった気遣いをみると、さすが『日本ギルド本部』の受付嬢という感じだ。噂通りである。


「では、本日ダンジョンに探索に入るということですがダンジョン配信はされますか?」

「え? あ、はい」

「では、『Dストリーマー登録』や『Dビジョンアプリのインストール』もすでにお済みでしょうか?」


 あ、忘れてた!


「す、すみません! 忘れて⋯⋯ました」


 俺はダンジョンにすぐに潜ろうと興奮するあまり、肝心要のDストリーマー登録するのをド忘れしていた。しかも、


「ドローンカメラも⋯⋯買ってないじゃん」


 そう、よくよく考えれば配信にはドローンカメラが必須なのに、それすら忘れて勢いのままここまで来てしまった。そんな自分の不甲斐なさに一人落ち込んでいると、


「あ、大丈夫ですよ。日本ギルド本部ここではDストリーマー登録もDビジョンアプリのインストールもできますから」

「えっ! ほ、本当ですか?!」

「はい。あと、ドローンカメラも購入できますし、レンタルも可能ですよ」

「おおおおおおおおおお!」


 さっきまで泥のように落ち込んでいた俺だったが、受付嬢さんの言葉にテンションがアガっていく!


「お、おおお、お願いしますぅぅ〜〜〜っ!!!!」

「クス⋯⋯かしこまりました。ではこちらへどうぞ」


 受付嬢の美人お姉さんがクスリと笑いながら『Dストリーマー登録専用ルーム』へ案内された。



********************



「ここが、『Dストリーマー登録専用ルーム』です」


 受付の美人お姉さんに連れてこられたのは、漫画喫茶のような一人用ボックス部屋がズラリと並ぶフロアだった。なんと1フロア、ブチ抜き! ほえ〜。


「Dストリーマー登録では、個人情報を扱いますし、探索者シーカーによっては衣装を来たり変装したりして配信用サイトのアイコン写真を撮る方もいらっしゃるのでこうして一人用ボックス部屋を用意しています」


 なるほど。たしかにDストリーマーにはただのダンジョン探索の配信だけじゃなく、アイドル目的でダンジョン配信するのもいたしな。まーアイドルとかはここではなく事務所のほうで全部やってもらっているだろうけど。


「あと、ドローンカメラは購入されますか? レンタルされますか?」

「レンタルで」

「かしこまりました。では、Dストリーマー登録並びに『ディービジョン』アプリのインストールが終わりましたら、ボックス内にあるパソコンからスタッフ呼び出しのアプリでお呼びください。登録が終わる頃に合わせてドローンカメラをご用意しておきます」

「な、何から何までありがとうございます」

「いえいえ、当然の対応ですよ」


 そう言って、美人お姉さんがニコリと笑い去っていった。


「いや〜、マジでスタッフ優秀だな〜。高校生の俺にさえあんな神対応なんだもん」


 俺は美人お姉さんの対応を受け、改めて「日本ギルド本部の質の高さ偽りなし!」と感動する。


「おっと⋯⋯いけない、いけない。早速Dストリーマーの登録とDビジョンアプリにインストールしなきゃ」


 ということで、俺は『Dストリーマー登録専用ルーム』に入った。


「とりあえずは、スマホに『Dビジョン』のアプリをインストールするか」


 この『Dビジョン』というのはスマホアプリで動画配信サイトであるYo!Tubeヨーチューブの配信機能とドローンカメラが連動しており、Yo!Tubeの配信開始ボタンを押すとドローンカメラが自動で配信を開始し、逆にドローンカメラ側の配信開始ボタンを押せば自動的にYo!Tubeの配信がスタートされる。


 ちなみに、配信が開始されるとスマホのDビジョンの画面にはYo!Tubeのチャット欄が表示される。それを見ながら、探索者シーカーはコメントを拾ったりしてダンジョン配信活動を行うのだ。


「よし、インストール完了。さて、次はDストリーマー登録だが⋯⋯」


 Dストリーマーといっても、登録は一般のYo!Tuberヨーチューバーと同じくYo!Tubeで自身のチャンネルを開設しそこで設定をするだけ。なので、俺は部屋にあるパソコンでYo!Tubeを立ち上げて、自分のチャンネル登録作業を行った。


「えーと、収益化条件設定画面は⋯⋯これか」


 チャンネルが収益化となるための収益化条件は『チャンネル登録者1,000人』となっている。そして、見事条件を達成すれば、収益化希望メールを配信サイトの運営会社へ送り、それが受理されれば晴れてチャンネルが収益化となる。


 ちなみに、チャンネルの設定画面内にはその収益化希望メールが条件達成のタイミングで自動送信されるよう設定が可能なのでほとんどの人が利用している。俺ももちろん自動送信の設定にする。


「よしこれでチャンネルの基本設定はオーケーだな、あとは、チャンネル名を⋯⋯うっ!」


 ここで俺は重大なことに気づく。



「チャンネル名⋯⋯どうしよ?」

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