第10話010「威力過多過ぎて制御が大変な件」



——————————————————


結城 タケル(ゆうき たける)


レベル:1

スキル:『偽装(極)』『鑑定(極)』『格闘術(極)』『身体覚醒(極)』『魔力覚醒(極)』【※】

魔法:『火魔法』【※】『水魔法』【※】『土魔法』【※】『風魔法』【※】『雷魔法』【※】『光魔法』【※】『闇魔法』【※】

アイテム:『ストレージ(最高)』『ポーション(最高):99』『マジックポーション(最高):99』『攻撃力倍加ポーション:99』『魔法攻撃倍加ポーション:99』【※】


——————————————————



「ほ、本当に、異世界あっちで獲得したやつ⋯⋯だ」


 俺は自分の本当の・・・ステータスを見て唖然とする。


 だって、そうだろ?


 さっきまで『レベル1』で『スキルなし』のステータスだったんだぜ?


 目の前の2匹のゴブリンにさえ、軽く絶望していたんだぜ?


 それなのに、今は、


「全能感が半端ねぇ⋯⋯!」


 俺が自分のステータスを見てボケっとしていたその時、


「「ぐぎゃぎゃ!」」


「いまだ!」と言わんばかりに2匹のゴブリンが俺に襲いかかってきた。


 しかし、今の俺に2匹のゴブリンはただのモブ・・にしか見えない。


「スキル⋯⋯『身体覚醒(きわみ)』」


 ズォォッ!


 俺はスキル『身体覚醒(極)』を発動。体が青白いオーラに包まれる。異世界あっちにいたときの慣れ親しんだ感覚・・・・・・・・が蘇ってくる。


「とはいえ、異世界あっちにいたときのレベル120の身体覚醒(極)ほどではないが⋯⋯」


 2匹のゴブリンが俺の目の前に迫ると、持っていた棍棒で俺を思いっ切りぶん殴った。


 バキャァァ!!!!


「「ぐぎゃっ!?」」


 しかし、俺は何ともなかった。より正確にいうとゴブリンのフルスイングした棍棒は粉々に砕けたが、俺の体には傷一つついていなかった。


 それもそのはず。なんせ、この状態であればゴブリンどころか異世界あっちにいたB級魔物の大型巨人サイクロプスの攻撃でさえ、俺に傷一つつけられなかったのだから。


「じゃあ、次は攻撃力の確認でも⋯⋯」


 そう言って、俺はゴブリンに軽く・・拳を出した。


 パーーーン!


「え? 破裂した?」


 てっきり岩壁に向かって吹き飛んでいくものと思っていたのだが、想像以上に力が強かったのか、ゴブリンが弱過ぎたのか、風船のようにパンと破裂した。


 隣にいたゴブリンが何が起きたか理解できていないようで、さっきまで横にいたゴブリンの場所と俺をキョロキョロとしていた。


「おかしいな〜。そんな破裂させるつもりで殴ったわけじゃないのに⋯⋯。力の制御ができていないのか? それとも現代ここの魔物が弱いってこと? それとも、『身体覚醒(極)』の威力が現代ここで上がってる?」


 とりあえず、もう1匹のゴブリンにはもう少し力をセーブして殴ってみた。


 パーーーン!


「えっ?! これでも破裂するの!! だいぶ力抑えたんだけど⋯⋯」


 さっきまで2匹のゴブリン出現にただただ絶望した俺だったが、今では自分の力の制御がうまくいかないことに頭を悩ませていた。


 贅沢な悩みである。



********************



 あの後、一通り魔物と戦ってみた。


 とは言っても、ここにはスライムとゴブリン、それとコボルトくらいしかいないが。


 そして、


 パーーーン!


「う〜ん、これだけセーブしても⋯⋯ダメか」


 今、ちょうどコボルト3匹を相手にゴブリンのときよりもさらに10%の力・・・・・で殴ってみた。しかし、それでも結果は同じだった。


「まー魔物を倒せるのはいいんだけど、こんな戦い方を他の人に見られたら⋯⋯かなりマズイと思う」


 それなりに探索者シーカーのことは憧れていたから、有名な探索者シーカーのダンジョン探索活動の配信動画はいくつも観たことがあるのだが、低レベルの魔物とはいえ、こんな殴っただけで魔物を破裂させるようなのは一度も観たことがない。


「この世界ではかなりのアドバンテージだし、正直チートだとは理解しているが⋯⋯にしても、これはさすがに目立ち過ぎる」


 こんな理不尽な世界で、目立つのは正直かなりリスクが高いと思う。


 とはいえ、別にチヤホヤされたくないというわけではない。


 いや、むしろチヤホヤはされたい。ただし、


「限度というものがある」


 そう、限度だ。


 やりすぎはいかん。いかんのだよ〜。


 できれば、今この探索者シーカー養成の期間内であれば『レベル10』程度の力が妥当だ。


 その程度のアドバンテージであれば人に見られても「お? あいつ結構すごくね?」程度の扱いで落ち着くはず。ということで、今の俺は当初の目標だった『レベル2に上がること』から、


「今日中に余りある・・・・力の制御をできるようにしなければ」


 に変わった。



********************



 その後、俺は一人でダンジョン一階層で魔物を倒しまくった。


 とはいえ、他の探索者シーカー見習いに見られるわけにはいかなかったので、『スキル:索敵(極)』を発動して周囲に人がいないことを確認しながら探索活動を行った。


 あと俺のステータスにある『【※】』というマークだが、これは情報が多過ぎてステータス画面に表記しきれないときに出てくる。なので、この『【※】』を押すとステータス画面が詳細画面に変わり、表記しきれなかった情報が開示される。


 いわば『詳細情報のリンク先』みたいなもんだ。『スキル:索敵(極)』は、スキルの【※】を開くと出てくる。


「ふぅ⋯⋯時間はまだ16時か。もう少しいけるな」


 この時間になる頃には俺以外の他の探索者シーカー養成講座の参加者はほとんどいなかった。


「まー初めてのダンジョンだからな。恐らく精神的にも肉体的にも疲れたんだろう⋯⋯無理もない」


 などと、上から目線の言葉を吐く俺だったが、実際俺の力がそれ相当なだけに皮肉にも皮肉になっていなかった。


「⋯⋯さて、ここは異世界あっちと違っていつレベルが上がるかは『自分の肌感』でしかわからない。面倒だが自分の体の変化を見逃さないようにしないとな」


 とりあえず、俺はそんなことをを考えながらどんどん魔物をほふっていく。


 そうして、さらに二時間が経過し、現在時刻は18時。


「ふぅ、とりあえず今日はここまでだな」


 別に体力的にも精神的にも疲れてはいなかったが、やること・・・・があるので今日の探索は終了した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る