第9話009「<さぷら〜いず>」
「か、完全に、出遅れた⋯⋯」
俺はすでに共闘して魔物を狩っている連中を羨ましげに見ながらその場を後にした。
その後、すぐにどこかのグループに声をかけようと歩き回ったが時すでに遅し。しかし、すでに全グループがそれなりの仲良しグループになっているため(少なくとも俺にはそう見えた)、ガラスハートチキン野郎な俺は声をかけられないまま、皆から離れる。
トボトボ⋯⋯。
「はぁぁ〜〜〜〜〜〜〜。あっち行って少しはコミュ力も上がって気軽に声かけられるようになったと思ったんだけどな⋯⋯。盛り上がっている人の輪の中に入るのってやっぱ今もダメだ」
元々、コミュ障だった俺は、異世界に行って勇者として活躍しててっきり治ったと思っていたのだが⋯⋯。どうやら思ったより根は深いようだ。
「とりあえず、どうしよう⋯⋯」
俺のレベルはリセットされて『1』。異世界だとレベル1はスライム1匹を倒せるくらいで、2匹目からは少し厳しいという感じだった。
「
一応、さっき色々とみんなの戦闘を見ていたいが、倒されたスライムとゴブリンの耐久値は異世界のソレとだいたい同じように見えた。
「異世界と違って、
「これって、考え方によっては
とはいえ、別にわかったところでどうこうという話ではないのだが。
その時だった。
「「ぐぎゃぎゃぎゃ⋯⋯」」
「っ!」
目の前にゴブリンが2匹現れた。
********************
「くっ!? ゴブリン! しかも⋯⋯2匹かよ!」
レベル1でゴブリン2匹は軽く死ねる。
「いや、死んでどーする!」
俺は混乱のあまり、セルフツッコミを決めながら武器として用意した鉄パイプを握り構える。
「だ、大丈夫だ⋯⋯。俺には、
本当はスライム相手に試してからと思っていたが⋯⋯仕方ない。
「「ぐぎゃぎゃ⋯⋯」」
ゴブリンは俺の構えを見て警戒したのか様子を伺っているようで、すぐには襲ってこなかった。
「だからと言って、このまま膠着状態ってわけでもないだろう。とにかく、このアイドル時間で何か手を考えないと⋯⋯」
俺はゴブリンどもが襲ってこない間に、この状況を打破する何かがないかと、レベル1以外何もないステータスを悪あがきではあるがそれでも何かないかという思いで開いてみた。
「ステータス!」
ブン⋯⋯。
脳内で俺のステータスが表示される。
「レベル1、スキルなし。まぁ転移前のステータスと同じ⋯⋯⋯⋯え?」
何だ、これ?
——————————————————
結城 タケル(ゆうき たける)
レベル:1
スキル:なし
<さぷら〜いず>
【※】← ポチッとな!
——————————————————
「さ、さぷら〜い⋯⋯ず?」
ステータスを開くと、これまで見たことなかった『<さぷら〜いず>』という表記があった。
「こ、こんな表記、異世界に転移する前にはなかっ⋯⋯⋯⋯あ!」
その時、俺の脳内にグシャビチョ女神の『てへぺろ!』イメージが出てきた。
「
とりあえず、現在戦闘中な俺にゆっくりと考える時間などはない。ということで、すぐにその『さぷら〜いず』の下にある『ポチッとな!』をポチッとな、してみた。
ポチッとな!
『こんちゃ! あなたのキュートでハニーな女神だよ! 元気してるかな〜?』
ポチッとなをすると、いきなりグシャビチョ女神のポップな挨拶が脳内に飛び込んできた。相変わらずの軽いノリは健在のようで。⋯⋯メッセージは続く。
『えっと〜、タケルには元の世界に戻る前にレベルはリセットされるって話したよね? それはたしかにその通りなんだけどぉ〜、でもぉ〜、タケルには伝えてなかったことが一つあるんだよねぇ〜。うふふ⋯⋯ねぇ、何だと思う? ねぇ知りたい? 知りたいよね? え〜でもどうしよっかな〜?』
うざっ!
戦闘状態の緊迫した状況の中これはかなりうざい。殺意しか沸かねぇ!
『えぇ〜知りたいんだ〜? しょうがないなぁ〜。では発表しま〜す! じ・つ・は、タケルが
「⋯⋯え?」
『きゃ〜、言っちゃった〜! タケル、あなたの異世界での頑張りに私は最大限の感謝をしています。だから
「いや、ワクテカしてるじゃねーか!」
思わず、声を出してツッコんでしまった。ゴブリン2匹がビクッとする。あ、ごめんね、君たちに言ったわけじゃないからね?
とりあえず、俺のツッコミにゴブリンがビビって警戒を強めたのかさらに膠着状態は続いた。俺的には「これ幸い」と思いながら続きを聞く。
『というわけで! タケルには元の世界でもアホみたいに⋯⋯あっ失敬、自重を捨てたアホみたいに⋯⋯』
おい、より『失敬』になってるぞ?
『チートぶっぱしたり、ざまぁぶっぱしたり、俺なんかやっちゃいましたムーブぶっぱしたりと、私のメシウマ、酒ウマ、待ってます(ハート)!』
こいつ⋯⋯この世界でも俺を『酒の肴』にするつもりだったか。
『以上、あなたのプリチーでラブリーな女神からのさぷら〜いず報告でした〜! それじゃあ、この世界でも私の酒の肴のために頑張れ〜!』
最後は、隠さず『私の酒の肴のために』ってちゃんと言い切りやがった。
相変わらず、まったくもってムカつくグシャビチョ女神だぜ。
しかし、
だが、しかしである。
「いろいろ思うところはあるが、その『さぷら〜いず』はめっちゃありがたい!」
グシャビチョ女神のメッセージが終わるとステータス画面に『異世界で獲得したスキル・魔法・アイテムを解放しますか? [Yes][No]』というポップアップが出現。
もちろん迷わず『Yes』を押す。
ブン⋯⋯ッ!
——————————————————
結城 タケル(ゆうき たける)
レベル:1
スキル:『偽装(極)』『鑑定(極)』『格闘術(極)』『身体覚醒(極)』『魔力覚醒(極)』【※】
魔法:『火魔法』【※】『水魔法』【※】『土魔法』【※】『風魔法』【※】『雷魔法』【※】『光魔法』【※】『闇魔法』【※】
アイテム:『ストレージ(最高)』『ポーション(最高):99』『マジックポーション(最高):99』『攻撃力倍加ポーション:99』『魔法攻撃倍加ポーション:99』【※】
——————————————————
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます