安心できる人13



そのツルッとした頭に触れようとすると、泳斗くんがわたしの手をグッと掴んだ。早坂さんがピクリと動く。


「あ、ごめ・・・」


驚いたのは、次の泳斗くんの行動だった。早坂さんが1歩踏み込むのが見えたが、その前に、泳斗くんがわたしの首に巻きついた。


──あら?これは、ハグというやつ?

早坂さんと目を合わせる。不安そうに眉間を寄せているが、手は出さない。


なんだか母性本能をくすぐられ、わたしは泳斗くんの頭を撫でた。甘えたい・・・んだろうか。


「懐かれたわね」気づけば空舞さんも頭の上にいて、臨戦体制に入っていたのが伺える。


泳斗くんは、なかなか離れようとしなかった。その分、わたしの服は濡れていく。


「くっつきすぎじゃない?」早坂さんの指摘は無視する。


泳斗くんはわたしから離れると、その場から走り出した。子供とは思えない速さで池の周りを1周し戻ってくる。その顔は興奮気味で、息1つ切れていない。


わたしは拍手で称えた。「わー、凄い!わたしより速いよ泳斗くん」


褒められた泳斗くんは得意げだ。


「それで、どうするの?この子」痺れを切らした空舞さんが言った。


「そうねえ・・・1度、財前さんのところに連れて行こうかしら。陸でも動けるようだし」


「これからですか?」


「いえ、今は留守にしてるのよ。明日の夜戻ってくるとは言ってたけど。後で連絡してみるわ」


「わたしも行きます」


「ええ、もちろん」


「前にあなた達が言っていた男ね。大蛇の呪いを受けているっていう」


「・・・あ、空舞さんは会ったことないですもんね。一緒に行きますか?」


早坂さんに目で確認すると、頷いた。


「空舞ちゃんの事は彼も知っているから。1度会ってみるといいわ」


「そうね。考えておくわ」


空舞さんはあまり乗り気じゃなさそうに見えるが、何か理由があるんだろうか。


「よし、今日は一旦撤収しましょう。泳斗くん、明日迎えに来るから此処にいてくれるかしら?」


泳斗くんはわたしと早坂さんの顔を交互に見た。


「迎えにくる?」


「うん、泳斗くんにね、会わせたい人がいるんだ。ここから移動しなきゃならないんだけど、いいかな?」


泳斗くんがどこまで意味を理解しているかはわからないが、コクンと頷く。


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