安心できる人5



【光林公園】案内表示に従って出ると、本当に目の前にあった。

地図を見るに大きな公園だと思っていたが、想像していたより広大な敷地だ。遊具などは無いが、園の中心に大きな池があり、その周りに歩道が整備されている。歩道沿いに並ぶ花壇には色とりどりの花が植えられている。


「こんなとこあったんだ・・・意外と知らないものですね」


「あなた、よく走ってるけど此処には来た事ないのね」


「わたし、家の近くの川沿いしか走らないので」


池の周りをランニングするおじさんを見て、何故か闘志が湧いてきた。決して走るのが好きというわけではないが、あの年代の人がストイックに走っているのを見ると、わたしも負けてられないと思ってしまう。足が治ったら、此処もコースに追加しよう。


「ここまで広いと、見つけられるかな・・・」


「こっちよ」 そう言うと、空舞さんは池を囲む木の柵へ飛んでいった。わたしも後を追いかける。


「なんですか?」


「あそこよ。1番手前の尖っているやつ。あの辺から顔を出したの」


空舞さんが言っているのは、池の中から突き出た岩の事だ。柵から2メートル程の所に、他より鋭い岩がある。


「出てきますかね?」


「どうかしら、わたし達に気づいていれば出てこないかもね」


「・・・あの、ちょっと思ったんですけど」


「なに?」


「その子供は、空舞さんに気づいて逃げたんですよね」


「ええ」


「人間だったら逃げないかも・・・?」


「・・・どうかしら。わたしを何と認識しているかわからないけど。離れてみましょうか?」


「そうですね、試してみる価値はあるかも」


「わかったわ。いい?あまり近づきすぎないで。子供だからといって油断は禁物よ」


「わかってます」


空舞さんはわたしの後方へ飛んで行き、大きな柱時計の上に降り立った。空舞さんは視力も良いし、あの高さならこちらの様子も見えるだろう。


──その妖怪が出てきたとして、どうすればいいものか。子供と言っていたけど、言葉は通じるんだろうか。いきなり襲ってきたりしないよね。


池を眺めながらしばらく待ってみたが、変化はない。周りを見回して、近くに誰もいないのを確認する。


「おーい、誰かいますかー」











  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る