安心できる人3
「それで、その公園には行ってきたんですか?」
「ええ、ずいぶん前にね。やっぱりそこに居たわ。でも、わたしに気づいてまた姿を見せなくなったわ。そんなに近づいたつもりはないんだけど、よほど警戒心が強いみたいね」
「ずいぶん前にって、空舞さんいつ戻ってきたんですか?」
「ここに来たのは8時くらいよ。なぜ聞くの?」
という事は、戻ってきてからわたしを起こさずに待っていてくれたのか。最終的には起こされたけど、いつもの空舞さんなら時間構わず起こしてくるのに。そんなちょっとした事が、嬉しく思う。
「特に意味はないです。空舞さん、子供って言ってましたよね」
「ええ、子供よ。遠目で見る限りは」
子供の、妖怪?思い浮かぶのは、あの化け猫くらいだ。
「その公園の名前とかわかります?」
「それも調べてきたわ。光林(みつばやし)公園という名前よ」
さっそく携帯の地図アプリで調べる。ヒットしたのは一件だけ。ここから約5キロ離れた場所にあるようだ。普段なら徒歩で行ける距離だが、この足ではさすがに厳しい。
「遊里と正輝には言わないの?」
「あー、言うのは言うんですけど・・・」
昨日の事があるし、さすがにこのタイミングでは言いづらい。2人だって相当疲れているだろうし。1人では動くなと言われているけど、見に行くだけなら大丈夫だろう。
こうなったらタクシーを使うか。しかし、わたしの移動手段にタクシーという選択肢は存在しない。何故なら、お金がかかるから。
「何を考えているの?」
「え?あ、タクシーで行こうか迷ってるんです」
「1人で?」
「はい。とりあえず見に行って、それから報告しようかなと。2人には」
「なぜ?」
「・・・昨日の今日だし、煩わせたくないんです」
「それはあなたも一緒じゃない。足も怪我しているのよ」
「まあ、そうなんですけど・・・だからタクシーで行こうかなと」
「だったらそうすればいいじゃない」
「いや、そうなんですけどぉ・・・」
空舞さんは首を傾げた。
「何か問題があるの?」
「・・・お金?タクシーは高いんです」
「ああ、そーゆうこと。あなた貧乏なのね」
「うっ」否定出来ないのが、悔しい。
「確かに、こんな家に住んでいるものね」
ここまでストレートに言われると腹も立たないが、しっかりとダメージは受けた。
「いんですぅ!わたしは気に入ってるから!」
「その公園の近くに地下鉄の駅があったわよ」
「えっ!・・・そーゆう事は早く言ってもらえると助かります」
再度地図を確認すると、本当だ、公園の目の前に地下鉄の表記がある。それに、家の近くの地下鉄と同じ路線。ここから駅までは3分、降りてからは1分と言ったところか。これならイケそうだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます