安心できる人2


痛い。さっきからずっと、後頭部が、痛い。

わかってる、この小刻みに突いてくる物の正体は。うつ伏せで寝ていてよかった。


「起きます・・・起きますから・・・」


気合いを入れて即座に起き上がり、ベッドにあぐらをかいた。


「顔は起きてないわよ」


「・・・ほはようございます」


「もうお昼よ」


「えっ」──本当だ。時計はもうすぐ午後を迎えようとしている。「空舞さん、その公園に行ってきたんですか?」


「その前に、鏡を見たほうがいいわよ」


「・・・そんなに酷いですか」


「ええ」


携帯のカメラを起動して自分に向け、絶句した。誰だお前は?猿みたいな赤い顔に、スーパーサ◯ヤ人のようにそびえ立つ髪。

ああ、昨日シャワーを浴びて、そのまま乾かずに寝たんだっけ。ショートヘアはクセがつきやすいのがネックだ。見るに耐えれず携帯を伏せた。


「それで、どうだったんですか?」


空舞さんは顔を背けて、何も答えない。何か問題でもあったんだろうか?


「空舞さん?大丈夫ですか?」


そのうち、空舞さんの羽が小刻みに揺れ始めた。


「いえ、ごめんなさい。だって、あなた・・・あなたのその・・・」


ああ、声も身体も震えてるのは笑ってるからね。


「顔洗ってきます」


洗面所の鏡で自分の顔を見た時、空舞さんの気持ちがわかった。誰だって、笑うわな。ここに写っているのは、妖怪か?

水で髪を濡らし、ドライヤーをかけると幾分マシになったが、これは出勤前にもう1度シャワーを浴びる事になりそうだ。


「足の具合はどう?」


部屋へ戻ったわたしに空舞さんが聞いた。


「あ、大丈夫です」


「大丈夫な割には、遊里に背負われてたわね」


そこまで見ていたのか。


「軽い捻挫なんで、そのうち治ります」


「あなたは、自分の事には本当に無頓着ね」


「・・・心配してくれてるんですか?」


からかうように言うと、空舞さんはわたしの肩に飛んできた。そしてクチバシでわたしの頬を撫でる。


「当たり前でしょ。あなたは友達よ」


「・・・ふふ、そうですね」ツンデレとは、こういう事なのか。わたしも空舞さんの頭を指で撫でた。


「愚かなのに変わりはないけど」


へいへい。空舞さんの憎まれ口にも、慣れてきた。

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