だから、それは何?2


「わさびだ!そしてとうとうってなんだ!」


「まあ、それはないか。早坂さん、アンタの事溺愛してそうだし」


「・・・溺愛って・・・」


春香は2杯目のビールを頼み、わたしも濃いめのハイボールを追加した。勢いをつけなければ話せそうにない。


「ヤケ酒?」


「・・・まあ、ある意味」


「何があったのよ」


「・・・あのさ・・・」とは言ったものの、切り出し方がわからない。ここはグダグダと経緯を説明するより、ハッキリ本題に入ったほうがいいよね。


そうこうしている間に、追加のお酒が運ばれてきた。春香はビール、わたしはハイボールをゴクゴクと喉に流し込む。そして、春香は痺れを切らしたようにジョッキをテーブルに置いた。


「あーめんどくさい!早く言え!」


「キスッ・・・」情けない事に、その一言しか出てこなかった。


「キスゥ?されたの?」


当たり前のように察してくれる春香に感謝だ。


「うん・・・と言っても、首にだけど」


「首にって、それどーゆうシチュエーションよ?押し倒された?」


「ぶぁ・・・っか!違う!その・・・抱っこされてて」


「抱っこぉ?待って、全然状況が掴めないんだけど」


「とにかく!状況は置いといてっ・・・首にキスする心理って、なに?」


春香は呆れたように上を向いた。「なんだ、ただのノロケか」


「ちがーう!本気で悩んでるんだって!」


「逆に何をどう悩むわけ?」


「だから、向こうが何を考えてるかわかんないから・・・」


「アンタら、本当に付き合ってないの?」


「付き合ってない!」


「嫌だった?」


「・・・何が」


「キスの話をしてるんでしょうが!」


「声がデカい!・・・嫌というか、驚いてそれどころじゃなかったというか」


「答えになってないわよ。嫌だったの?」


「・・・いやぁ・・・?じゃ・・・ない?」


「どっちよ。正直に言ってみなさい」


あの時の感情に、"嫌"という物が少しでもあったか?考えて、すぐに答えは出た。


「じゃない」


「はいおめでとう」しれっと言い、春香は自分のジョッキでわたしのグラスを鳴らした。


「なにが?」


「カップル成立記念」

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