第38話 乗り込む一行

 格納庫の中、そこに並ぶ5体の機械たちを見て、一行は圧巻とした。


「おお……凄い……」

「凄いって、君が設計したんだろ? ヴェラ」

「あ、そうだったぁ」


 ヴェラは圧巻するあまり、自分の設計した機械に対し、自画自賛をしてしまった。


「……さて、これで宇宙に行くんだよね、レプちゃん」

「……はい、宇宙で……アルネブ達が最終攻撃に備えているはずです」

「そこを僕たちがこいつらで止める……ということだな」


 5人は緊張していた、宇宙へ向かい、下手をすれば死ぬかもしれない……。

 しかし、その中で、レプスは声を上げた。


「皆さん! 準備は良いですか! 確かに、私も怖いです……でも、ここまで来れたんです! 私達ならきっとできます!」


 ……レプスの激励に真っ先に同調したのは……ヴェラだった。


「うん! レプちゃんも準備オーケー?」

「もちろんです!」

「ほら、ポーちゃんは?」

「ぼ、僕か!? も、勿論! やってやるさ!!」

「ほ、本当に行くんだね……ちょっと俺、緊張しちゃうなぁ」

「アンタ、ここまで来て何言ってるんだい!」

「あ、ごめんよ……でも、怖くてさ……」

「怖いのはアタシも同じだよ! 全く……なんでこんな男がアタシの夫なんだか……ま、そこに惚れたんだけどさ」


 ……5人は覚悟を決め、息を飲んだ。


「じゃあみんな! 行こう! この世界を救いに!」


 5体の機械に目掛けて、一行は歩き始めた……世界を救うという目的の為に。

 ヴェラはレプスの手を繋ぎ、兎人の機械に向かって歩き始めたが……レプスの手は、恐怖のあまり、震えていた。


「レプちゃん、やっぱり怖い?」

「はい……お恥ずかしながら……」

「そりゃそうだよね……同族が相手なら、誰だって躊躇するよ……やっぱりやめる?」


 ……ヴェラの言葉に、レプスは大きく頭を横に振った。


「……いえ! これも故郷のため! 例えダメでも……やってみます!」

「……うん!」


 ……レプスとヴェラは激励代わりに、お互いの額を付けた。

 レプスは気合を入れ、兎人の機械へと走り出した。


「よぉーし! 私も!」


 ヴェラはちりゅうの機械へと走り出し、乗り込んだ。

 コックピットは、自動車のそれとは違い、まるで壁に囲まれた部屋に座っているような感覚だった。


「では、起動!」


 一行は魔法版に手を翳し、機械を起動させた。

 一行の座る席の前に映像が現れた……そこに映し出されたのは、機械の目の前の風景……格納庫の中、商会の従業員たちが興奮している様子だった。


「おおおおおお!! すごぉーい!!」

『おい! 大声で叫ぶな!』

「え? ポーちゃん?」

『この5体の機械は声が共有されているんだ! 自分で設計したんだろう!』

「ええ? 私付けてないけど?」

『あ、すみません! 私が付けました! あった方がいいかなって……』

「レプちゃんが付けたの? すごいね!!」

『すごいねぇ、みんなの声が聞こえるよ』

『おお、レプスちゃん、もしかして設計の才能ある?』

「だね! かいちょーの言う通り、才能あるよ! レプちゃん!」

『そんなぁ……照れちゃいますよぉ……』

『そうだねぇ、この戦いが終わったらウチに来な、ヴェラが教えてくれるだろうさ』

「いい提案ですね! ふくかいちょー! レプちゃん、これが終わったら、一緒に設計しよう!」

『はい!』


 各々は出陣前の緊張をほぐすために、語り合った。


「……さぁみんな! 行こう!」


 ヴェラの号令により、機械たちは進む準備を整えた。

 従業員たちは急いで格納庫の扉を開け、敬意を示すようにヘルメットを脱いだ。


『……みんな! 俺たちがいない間、商会は頼んだよ!』

『きっと戻るからね!』


 5体の機械たちは、格納庫を後にした。

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