第30話 体を洗う令嬢

「じゃあレプちゃん、頭洗うね」

「あ、は、はい……」


 ヴェラは手の上で石鹸を泡立て、レプスの髪の毛を洗い始めた。


「レプちゃん、髪の毛綺麗だよね」

「そ、そうですか?」

「うん、雪みたいに綺麗だよ」


 口ではこう言うヴェラであったが、心の中では……。


(きゃー! レプちゃんの髪の毛めっちゃ綺麗! 兎の耳もピョコっとしててめっちゃかわいい! しかもレプちゃんの背中とっても整ってる! これぎゅーってしたらどうなるのかな?)


 ……欲望に溢れていた。

 そんな妄想をしつつ髪の毛を洗うヴェラだったが、レプスの耳に触れた瞬間、異変が起きた。


「きゃっ!?」

「え!? なに!?」


 レプスの体は、自分の意思とは関係なく跳ねた。

 突然の行動に、ヴェラは少しだけ距離を開けてしまった。


「あ、すみません……その……耳は、敏感なので……もうちょっと優しく……」

「あ、ごめん……じゃあゆっくり……」


 ヴェラはレプスの耳をハンドルのように優しく掴み、親指をゆっくりと回し、耳を洗い始めた。


「大丈夫? くすぐったくない?」

「ふぁ……えっと……大丈夫……です」

「本当? じゃあ続けるよ?」


 ……ヴェラの心の中では、レプスの耳の柔らかさに驚愕する一方、なにやら犯罪を犯している気分になり、罪悪感も感じていた。


「れ、レプちゃん! な、流すね? 目、閉じて?」


 ヴェラは早く終わらせようと考え、レプスの全身に雨を降らせた。

 レプスの体に付着していた泡は、お湯と共に床に落ちていき、全て流れていった。


「は、はい! 終わったよ!」

「ありがとうございます、ヴェラさん」

「こ、これくらい! 当然でしょ?」


 ヴェラは平常心を装い、得意げな表情を見せた。


「それじゃあ次は、私がヴェラさんの体を洗ってあげます!」

「いいの?」

「はい! 私に任せてください!」

「じゃあ……お言葉に甘えて」


 レプスの座っていた場所にヴェラが座り、レプスはアカスリと石鹸を受け取った。


「え、えーっとすみません、これは、こういう風な感じで良いのでしょうか?」

「うん、大丈夫だよ」

「は、はい! じゃあヴェラさん、洗いますけど……くすぐったかったら、言ってくださいね?」


 レプスはヴェラの体を、優しく洗い始めた……。


(ど、どうしよう……レプちゃんの力、とっても優しい……かわいくてぎゅーってしたい……で、でも我慢……我慢……)

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