第28話 レプスの保護

「あの、かいちょー、ふくかいちょー……」

「話が見えてこないのですが、何か?」

「他の商会だよ! ウチらだけじゃなくて、他の商会からも協力を要請すりゃいいのさ!」

「な、なるほど!」


 メリクの考えにヴェラは賛同するも……ポラリスは納得のいかない表情をしていた。


「ポーちゃんさん、どうかしましたか?」

「いや、そう簡単に行くか? さすがに無償で貸してくれるとは思えないのだが……」

「そこをなんとかするのがアタシとアルだろ!」

「おいおい、俺もか?」

「だって、会長のアンタが頭を下げなくてどうすんのさ」

「う、うーん……」


 メリクに迫られたアルタイルは、何も言えず、縮みこんでしまった。


「……まぁとにかく! 私たちはできる事やろう! じゃあ私は今からこの兎の奴の術式考える!」

「おいおいヴェラ! 大丈夫なのか? 残業明けで、ここまでいろいろあっただろう?」

「え? 全然元気だけど? こういう状況だもん! やらなくちゃ……あれ?」


 やる気を出し、立ち上がったヴェラだったが……同時に眠気に襲われ、即座に座り込んだ。


「ほら言わんこっちゃない……」

「ごめん、ポーちゃん……」


 ポラリスは倒れそうになっていたヴェラを支えた。


「ヴェラ、今日は休んだ方がいいよ」

「そうだよ、メリクの言う通り、今日はもう寝なさい」

「ふくかいちょ……かいちょー……すみません」

「……よし、では日を改めましょう、僕も自分の部屋に戻るからな、ヴェラ」

「じゃあアタシたちも明日に備えようかね、アル」

「だね」


 一行は一度解散することになった……が、レプスは困り顔になった。


「あの、私は……」

「レプちゃんは、私と一緒だよ!」

「ヴェ、ヴェラさん!?」


 ヴェラはレプスを思いきり抱き締め、撫で始めた。


「……そうだな、このまま外に出るのは危険だし、レプスはヴェラと一緒の方がいいだろう」

「……ヴェラ、ちゃんと面倒見るんだよ」

「まっかせてください!! レプちゃんは私が守ってあげるからね! まずは一緒にお風呂入ってー……一緒にお話ししてー……それでベッドでぎゅーってしながら寝てー……えへへへへへへ……」

「……おい、欲望が出てるぞ」


 ……ヴェラは、妄想を膨らませ、気味の悪い笑顔を浮かべるが、当の保護対象であるレプスは、喜びの表情を浮かべていた。


「おおお……私、ヴェラさんのお部屋でお泊りできるんですね!」

「うん! 今日はずーっと一緒だよ!」

「はい!」

「……まぁいい、それじゃ、僕は明日に備えるからな」

「じゃ、行こうか……みんな、また明日ね」

「ちゃんと面倒見るんだよ! じゃあね!」


 ……一行は一度解散となった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る