第16話 同僚との再会
「……よし、兵士の姿は無いね、来て!」
2人は物陰に隠れ、兎と人間、両方の兵士の有無を確認しながら目的地へと向かった。
ヴェラが向かった先……そこは。
「よし、良かった……ここは何ともないみたいだね」
……4階建ての集合住宅、勘当され追い出されたヴェラの今の帰る家だった。
集合住宅の看板、そこには『ピクシス製作所商会員合同宿舎』と書かれていた。
所謂社員寮……ヴェラを含め、商会の従業員たちの多くはこの集合住宅を拠点に置いている。
「ヴェラさん、ここは?」
「私の家! 来て!」
ヴェラはレプスを連れ、集合住宅の中へと入った。
集合住宅の中に入ると……玄関ホールに、入寮している商会員たちが身を寄せ合っていた。
「……ヴェラ!」
「ポーちゃん!」
身を寄せ合っている商会員の中には、ポラリスの姿があった。
ポラリスはヴェラの姿を見るや否や、生存を確認するために、ヴェラの身を包んだ。
「よかった……ヴェラが無事で……」
「私も、ポーちゃんが無事でよかった……」
「だから、ポーちゃんって呼ぶなぁ……」
ポラリスは……感極まり、大粒の涙を流し、ヴェラの頭を濡らしていった。
体温を感じ、気持ちを整えたポラリスは、ヴェラと目線を合わせた。
「全く! 本当に大変だったんだぞ! なんか得体の知れない兎の耳の生えた奴らがここに入ってきて……訳の分からないことを口にしながら襲い掛かってきたんだ! 幸い僕が食い止めて、奴らは軍隊の人たちが連行していったのだが……」
「へぇー、ポーちゃん強いんだね」
「つ、つよ……と、当然だ! こうして寮にいる人たちも無事なのは僕のおかげだ! うん!」
「凄いねー流石ポーちゃん!」
「す、すご……そ、そこまで褒められると……僕……」
ポラリスは感激を抑えようと、手で顔を覆い、頭を大きく振った。
それでも興奮を抑えられなかったのだが、ヴェラの後ろにくっついている人物……レプスを見て、その興奮の熱が一気に冷めていった。
「……んん、ところでヴェラ、そこの方は何者だ? ウチの作業着を着ているようだが……」
「あー……っと、どう説明すればいいのか……」
ポラリスは……得体の知れない人物が自分たちの作業服を着ていることに、遺憾の意を示していた。
彼女の鋭い目はレプスに狙いを定め、当のレプスは……天敵を発見した小動物のように、ヴェラの後ろへと隠れた。
「ねぇ、ポーちゃん、ちょっと……私の部屋に着て」
「き、君の部屋か!? な、なぜ突然……」
ヴェラは、ここでレプスについて説明すると騒ぎになると考え、自身の部屋で3人で話そうと画策した……のだが、ポラリスの耳には、別の意味で聞こえてしまったようだった。
「ちょっと……ここじゃあ話せないことだから……ね?」
……ヴェラの言葉を聞き、ポラリスは顔を赤くした。
(ここじゃ話せない……ま、まさか、そういうことなのか? い、いや……そんな……こんな状況で……)
……無論、ヴェラはポラリスが思っているようなロマンチックなことを話したいわけではない。
「……ま、全く、仕方がないな、いいだろう、そこの者に着いて僕も聞きたい事があるからな! さぁ行こう!」
3人は立ち上がり、ヴェラの部屋と向かった。
レプスはポラリスの視線に怯えながら、ヴェラの後ろに着いていった。
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