第15話 武勇伝
「ど、どうでしょう? 違和感ないですか?」
「うん、よく似合ってるよ……」
「だ、大丈夫ですか? 顔が赤いようですけど……」
「な、なんでもないよ! は、早く行こう!」
「は、はい!」
ヴェラはレプスの手を掴み、立ち上がった……。
(どうしよう……作業着姿も可愛いな……でも仕方がないけどすごいブカブカだな……)
作業着は、レプスの身長、体格とまるであっていなかった。
上半身は服の袖の中間までしか腕が届いておらず、下半身は裾を限界まで上げて何とか足を出しているような状態だった
ヴェラはそれでは歩きづらいだろうと考え、応急処置として魔法で裾を固定した。
レプスを引っ張り格納庫を出ようとしたが、レプスは目の前に聳え立つ狼の機械を見て、見惚れた。
「すごい……ヴェラさん、これはなんですか?」
レプスが注目したのは……先ほど自身が気を失っている間に、自身を守り抜いてくれた狼の機械……コボルトちゃん2号だった。
「レプちゃん! 気になる? 気になる!?」
「は、はい……」
ヴェラはレプスの肩を掴み、喜びを露わにした。
自分の機械に興味を示してくれた……しかもこんなにかわいい子が……ヴェラはそんなことを考えながらレプスの手を引っ張り、試作品コボルトちゃん2号に近づいた。
「この子はコボルトちゃん2号! かわいいでしょ? 私が作った工作機械なの!」
「こ、工作機械?」
「うん! これさえあれば工事現場で思い資材も自在に運べるし、建設にも使えちゃうの! しかもね、これを使って私たちを襲ってきた奴らも圧倒できたの! 見てて!」
ヴェラはコボルトの後ろに乗り込み、始動させた。
コボルトを操作し、実演して見せた。
「……ね? 凄いでしょ? これで侵入してきた奴らをこうして、こうしてやったの!」
ヴェラはコボルトを格闘家の素振りのように動かし、自らの武勇伝を披露した。
一通り披露した後、ヴェラはレプスの元へ戻った。
「……どうだった?」
「……凄いです! この星の機械技術はここまで発展しているのですね! なんか『ぴょんぴょん』します!」
「でしょ!? 凄いでしょ!? しかもね、これ設計したの私なの!」
「え? ヴェラさんが!?」
「うん!」
レプスは目を輝かせ、ヴェラを抱きしめた。
「……え?」
レプスの突然の行動に、ヴェラは頬を赤らめた。
「とっても凄いです! ヴェラさん! こんなに大きな機械を設計できるなんて! しかも、私も守ってくれたんですね! とってもぴょんぴょんです!」
「う、うん……」
「かっこいいです! ヴェラさん! 私を守ってくれた騎士様ですね!」
「き、騎士だなんてそんな……大袈裟だよぉ……っていうか、レプちゃん、苦しい……」
レプスの力は、まるで締め付けるかのように強かった。
「あ、す、すみません!」
レプスは慌てて拘束を解いた。
(ど、どうしよう……心臓バックバク……っていうか、レプちゃんの体、めちゃくちゃ暖かかった……)
レプスの鼓動は時を刻むようにヴェラの体に響き渡っていた。
ヴェラの体には、その振動と熱が、海溝のように深く刻まれた。
「ヴェラさん? 大丈夫ですか?」
「う、うん! だ、大丈夫……いけないいけない……」
ヴェラは首を大きく振り、再びレプスの手を掴んだ。
「そ、それよりもレプちゃん! 移動しよう! 隕石も降りやんだし、とりあえず外に……」
「は、はい!」
ヴェラはレプスの手を引っ張り、歩き出したのだが……レプスはヴェラの足取りに着いていけず、転びそうになった。
「あ、危ない!」
ヴェラは咄嗟にヴェラの体を支え……彼女の目を見て、その瞳に見とれてしまった。
……ヴェラの目には、彼女は美しい月の光のように見えていた。
宇宙からやってきた小動物のようなかわいい少女……ヴェラは先ほど抱きしめられていたことを思い出し、再び顔を赤らめ、妄想に耽った。
「も、もうちょっとゆっくり歩いてくださいよ~」
「あ、ご、ごめん! い、行こうか……」
レプスの言葉に我を取り戻したヴェラは、気を取り直してレプスを引っ張り……格納庫を後にした。
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