第13話 目覚める兎

「……このままじゃ、危ないか……何か、ごまかせるようなもの……あ! そうだ!」


 ヴェラは格納庫に仕舞ってあった作業着とヘルメットを持ってきた。


「と、とりあえず脱がせないとね……ちょっと失礼……って、これどうやって脱がせば……っていうか、勝手に人の服脱がせるって、私変態じゃん!? いくら同性だからってそんな……あ、いや、この子女の子だよね? 見た目かわいいけど……ていうかこんな時になにドギマギしてるの私! もぉ~」


 衣服を脱がせようとするヴェラだったが……いざ手を掛けようとしたその時、躊躇してしまった。

 ヴェラが緊張で徘徊する中、少女の瞼が……ゆっくりと開いた。


≪ん~……ここは、どこ? 私は……一体?≫


 ヴェラは目覚めた少女の事など気にも留めず、顔を赤らめながら徘徊していた。

 少女は辺りを見渡し、目の前に徘徊する女以外の人がいないことから、「この人物が自分を助けた」と理解した。


≪あのー……すみません≫

「あーもぉー、いくらこの子がかわいいからって何やってんのよ私~」

≪あの!≫

「でもかわいいのは事実だよねぇ~兎耳生えてるし、体は私よりも小っちゃいし~眠ってる姿も小動物みたいだし~」

≪……≫


 少女は聞く耳を持たないヴェラにしびれを切らし、立ち上がった。


≪あの!! すみません!!!≫

「うおおお!? お、起きてたの!?」


 少女の大声を聞きヴェラは我に返った。

 ヴェラは咄嗟に少女に近づき、目線を合わせ、少女の両肩を掴んだ。


「だ、大丈夫!? もう起きて大丈夫なの!? 外傷はない感じだけど……」

≪え、えっとー……この星の人ですか?≫

「……ん? なんて? もしかして、言葉……通じてない? そういえばあの野蛮な奴らも変な言葉で話してたよなぁ……どうしよう……」

≪あ、そうだった……これじゃあ言葉が通じないか、〈パラブラス! パサ!〉≫


 少女が呪文を唱えると……仕切り直しと言わんばかりに咳払いをした。


「……申し訳ございません、これで通じますか?」

「うおお!? いきなり!?」


 少女の言葉を突然理解できるようになったヴェラは、驚きのあまり、その場に倒れてしまった。


「……改めまして、助けていただきありがとうございます」

「い、いや、いいって! 頭上げてよぉ~」


 少女は頭を深く下げ、感謝の念を表した。


「……そ、そういえば自己紹介まだだよね? 私はヴェラ! ヴェラ・カノープス! 貴方は?」

「わ、私は……『レプス』と申します、お見知りおきを」

「う、うん……お見知りおきを? なんか随分丁寧に話すね」

「申し訳ございません、この口調……変ですか?」

「へ、変じゃない! 変じゃないよ!」


 少女……レプスの話し方はまるで、ヴェラが社交場で会った貴族令嬢のようだった。

 目を閉じると、どちらが貴族なのか分からないほどだった。

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